従業員に対して職場つみたてNISAの奨励金を給付した場合の賃上げ促進税制(租税特別措置法第10条の5の4又は第42条の12の5)の取扱いについて
2023年3月31日、「従業員に対して職場つみたてNISAの奨励金を支給した場合の賃上げ促進税制( 租税特別措置法第10条の5の4 又は 第42条の12の5 )の取扱いについて(文書回答)」が国税庁HPで公表されました。
「職場つみたてNISAの奨励金が賃上げ促進税制の対象となる給与等に該当することを明確化する」と令和5年度税制改正大綱において示され、今回の回答で整理された項目になります。
結論としては、事業主等が奨励金を給与等以外の費用である「福利厚生費」等として費用計上していたとしても、奨励金は、賃上げ促進税制の対象となる「給与等」に該当します。
今回は当トピックに関して、簡単に御説明致します。
1、職場積立NISAの概要
職場つみたてNISAは、職場という身近な場を通じて、NISA(少額投資非課税制度)を利用した資産形成ができるように事業主等が利用者を支援する、福利厚生の増進を図ることを目的とした制度です。
職場つみたてNISAの利用者は、事業主等が契約したNISA取扱業者が選定する金融商品の中から投資の対象とするものを選択して投資することになります。
2、奨励金の給付及びNISA口座への振込方法
事業主等は、職場つみたてNISAを利用する従業員に対し福利厚生の一環として奨励金を給付する場合があります。
支給方法は2つ示されています。
- 給与天引き方式
事業主等は、従業員に対して支給する給与の額からNISAの積立金相当額を天引きするとともに、当該積立金相当額に奨励金を加えた金額を従業員のNISA口座に振り込む方法により当奨励金を給付します。
(流れは以下になります)
従業員
↓
事業主等(積立金相当額を天引き、奨励金を合算してNISA口座振替)
↓
NISA口座 - 口座振替方式
給与天引き方式以外の方法として、事業主等は、従業員の給与と奨励金とを合算して当該従業員に支払い、従業員各自の預貯金口座等からNISAの積立金相当額に奨励金を加えた金額が従業員のNISA口座へ振り替えます(以下「口座振替方式」といいます)
(流れは以下になります)
事業主等(従業員に奨励金を支給)
↓
従業員(積立金相当額に奨励金を合算し、NISA口座に振替)
↓
NISA口座
3、賃上げ促進税制の概要
- 賃上げ促進税制の制度
一定の要件を満たす個人又は法人が、国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、その個人又は法人の継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額のその継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が一定割合以上であること等を要件として、控除対象雇用者給与等支給増加額の一定割合を所得税額又は法人税額から控除する制度です(措法10の5の4、42の12の5)。
- 賃上げ促進税制の対象となる「給与等」の範囲
賃上げ促進税制の対象となる「給与等」とは所得税法第28条第1項に規定する給与等をいうとされ(措法10の5の43二、42の12の53三)、同項に規定する給与等とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与をいうとされています。
4、結論
-
当奨励金は、給与天引き方式又は口座振替方式のいずれの方式によるものであっても所得税法第28条第1項に規定する「給与等」に該当する
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賃上げ促進税制においては、「給与等」について、会計上どのような科目で費用計上するかは特に限定されていない
(結論)
事業主等が奨励金を給与等以外の費用である「福利厚生費」等として費用計上していたとしても、当奨励金は、賃上げ促進税制の対象となる「給与等」に該当します。
以上
※コラム記載の内容は、あくまで個人的見解になります。
- 第1回:なぜ消費税は理解しづらいのか。法人税と消費税の計算方法の違い
- 第2回:なぜ利益が出ているのに、お金がないのか
- 第3回:令和4年1月1日施行、短期退職手当等について
- 第4回:「収益認識に関する会計基準」のポイント・対応状況について
- 第5回:中小企業向けの令和4年度税制改正のポイント
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- 第8回:会計監査人(監査法人)が実施する確認状関連の作業に関して
- 第9回:期末監査における会計監査スケジュール及び会計監査の実施内容に関して
- 第10回:決算日後に発生した「後発事象」。その種類と対応方法。
- 第11回:中小企業でも必要!会社の大小問わず必要な内部統制の解説
- 第12回:インボイス制度とは?税理士が解説する基礎知識
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- 第15回:【ビジネスコラム】インボイス制度の解説④
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