令和7年度 税制改正大綱解説②(リースに関する取引の整備)

自民、公明両党は昨年12月20日、「令和7年度税制改正大綱」を決定しました。
今回は、以前に当コラムで解説した新リース会計基準を踏まえた、リース取引についての整備に関して、解説したいと思います。
【1】今回の解説対象
(1)オペレーティング・リース取引の損金算入時期
(2)リース譲渡に係る収益及び費用の帰属年度の特例の廃止
(3)令和9年4月1日以後に締結された所有権移転外リース取引に係るリース資産の減価償却に関して
【2】具体的内容
(1)オペレーティング・リース取引の損金算入時期
オペレーティング・リース取引により、その取引の目的となる資産の賃貸を行った場合において、その取引に係る契約に基づき、その法人が支払う金額があるときには、その金額のうち債務の確定した部分の金額は、その確定した日の属する事業年度に損金算入する。
→新リース会計基準を踏まえたうえで、法人税法上は従来からの大きな変更がない事が明記されました。その為、オペレーティング・リース取引に関しては、新リース会計基準導入後においては、会計と税務に差異が生じる事となります。
現行のリース会計基準 | 新リース会計基準 | 法人税法上の取り扱い ※従来から大きな変更なし |
|
---|---|---|---|
オペレーティング・リース | オフバランス (賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理) |
オンバランス (使用権資産・リース負債) |
オフバランス (賃貸借処理) |
ファイナンス・リース | オンバランス (リース資産・リース債務) |
オンバランス (売買処理。資産及び負債の計上) |
(2)リース譲渡に係る収益及び費用の帰属年度の特例の廃止
リース譲渡に係る収益及び費用の帰属年度の特例を廃止する。
なお、以下の経過措置を講ずる。
- 令和7年4月1日前にリース譲渡を行った法人の令和9年3月31日以前に開始する事業年度において行ったリース譲渡について、延払基準の方法により収益の額及び費用の額を計算することができる
- 令和7年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度において、延払基準の適用をやめた場合の繰延リース利益額を5年均等で収益計上する。
→貸手側の処理の話になります。 新リース会計基準導入に伴い、現行の貸手側のファイナンス・リースの会計処理の<第2法>つまりリース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法は廃止されます。 それに税務も対応する形で、リース譲渡に係る収益及び費用の帰属年度の特例が廃止されます。
(参考) 貸手のファイナンス・リースにおける会計処理
第1法 | 第2法 | 第3法 | |
---|---|---|---|
現行のリース会計基準 | リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法 | リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法 | 売上高を計上せずに、利息相当額を各期へ配分する方法 |
新リース会計基準 | 売上高は利息相当額控除後で計上(改訂第1法) | 廃止 | 継続 |
(3)令和9年4月1日以後に締結された所有権移転外リースに係るリース資産の減価償却に関して
令和9年4月1日以後に締結された所有権移転外リースに係る契約に係るリース資産の減価償却について、リース期間定額法の計算において取得価額に含まれている残価保証額を控除しないこととし、リース期間経過時点に1円(備忘価額)まで償却できることとする。
なお、以下の経過措置を講ずる。
- 令和9年3月31日までに締結された所有権移転外リース取引に係るリース資産(その取得価額に残価保証額が含まれているものに限る)については、令和7年4月1日以後に開始する事業年度の償却方法につき、改正後のリース期間定額法により償却できることとする。
(参考)
現行のリース期間定額法
→リース期間定額法とは、次の算式により計算した金額を各事業年度の償却限度額とする方法です。
リース期間定額法の償却限度額
=((リース資産の取得価額-残価保証額)/リース期間の月数)×その事業年度のリース期間の月数
※残価保証額とは、リース期間終了の時に、リース資産の処分価額が所有権移転外リース取引に係る契約おいて定められている保証額に満たない場合に、その満たない部分の金額を賃借人が支払う事とされている場合におけるその保証額をいいます
本コラムの内容については、今後の国会における法案審議の過程等において、修正・削除・追加等が行われる可能性があることにご留意ください。
以上

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- 第31回:新リース会計基準に関して3(リース期間)
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