令和4年1月1日施行、短期退職手当等について

会計・経理
公開日:2021.12.15
更新日:2021.12.15
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第二回では、財務諸表について説明しました。今回は、令和4年1月1日から施行される、短期退職手当について解説していきます。

所得税法の一部を改正する法律により、役員等以外の者としての勤続年数が5年以下である者に対する退職手当等(短期退職手当等)について、その退職所得金額の計算方法が改正され、令和4年1月1日より施行されます。
施行時期も近いことから、今月はこのトピックの解説を行います。

①改正前と改正後の退職所得金額の計算方法の違い

まず改正前と改正後の退職所得金額の計算方法の違いを以下に記載します。

用語の定義に関しては以下になります。

  • 短期退職手当等→短期勤続年数に対応する退職手当等として支払をうけるもの
  • 短期勤続年数→勤続年数が5年以下であるもの

改正前

退職所得金額は、その年中に支払を受ける退職手当等の収入金額から、その人の勤続年数に応じて計算した退職所得控除額を控除した残額の2分の1に相当する金額。

退職所得金額の計算方法
(退職手当等の収入金額-退職所得控除額)×1/2=退職所得金額

改正後

短期勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるもので、特定役員退職手当等に該当しないものは「短期退職手当等」ということとされ、その退職所得金額については、以下のようにパターン毎に計算される事となりました。

パターン1
短期退職手当等の収入金額-退職所得控除額≦300万円の場合
(短期退職所得手当等の収入金額-退職所得控除額)×1/2=退職所得金額

パターン2
短期退職手当等の収入金額-退職所得控除額>300万円の場合
150万円+{短期退職手当等の収入金額-(300万円+退職所得控除額)}=退職所得金額

②ポイント

ポイントは以下になります。

・制度改正部分は短期退職手当等に限ります。
従って短期退職手当等に該当しない(勤続年数が5年超)場合、退職所得金額の計算方法につき、従前からの変更はありません。

・短期退職手当等に該当したとしても、短期退職手当等の収入金額-退職所得控除額が300万円以下なら、退職所得金額の計算方法につき、従前からの変更はありません。

・制度施行は令和4年1月1日です。退職日が令和4年1月1日以後の場合、当該論点の検討が必要です。

・短期勤続年数は、勤続年数のうち1年未満の端数を1年に切り上げたもので判断します。
つまり勤続年数が5年の場合→5年以下であり短期勤続年数に該当
勤続年数が5年4カ月の場合→1年未満の端数を切り上げる為、6年。5年超に該当する為、短期勤続年数に該当しない。

③所得税(復興特別所得税除く)の計算

以下で、具体例を基に所得税(復興特別所得税除く)の計算をしてみましょう。

前提:役員等として勤務した期間無し、退職日令和4年1月31日、退職手当等800万円

・勤続年数が5年の場合
短期勤続年数に該当する為、改正後の計算方法を用いる。
800万円-40万円×5=600万円>300万円の為、パターン2で計算を行う。
退職所得金額:150万円+{800万円-(300万円+40万円×5)}=450万円
源泉徴収税額:450万×20%-427,500円=472,500円

・勤続年数が5年4カ月の場合
1年未満の端数を切り上げる為、6年。5年超に該当する為、短期勤続年数に該当しない。
その為、従来からの計算方法により、退職所得金額を計算する。
退職所得金額:{800万円-(40万円×6)}×1/2=280万円
源泉徴収税額:280万円×10%-97,500円=182,500円

このように短期勤続年数に該当し、短期退職手当等の金額が大きい場合、従前から所得税額(源泉徴収税額)が増加する事になります。

今回の解説では、シンプルな条件を基に、説明を行っています。
より具体的な内容を確認したい方は、以下のPDFを参照ください。
国税庁から令和3年10月に公表された「短期退職手当等Q&A」のPDFになります。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0021009-037_01.pdf
国税庁が公表したQ&Aでは、複数の会社から同じ年に使用人としての退職金の支給を受ける場合や、同じ年に役員退職金と使用人としての退職金を支給する場合等の解説が行われています。

本コラムは、一般的な参考情報の提供のみを目的に作成されており、会計、税務およびその他の専門的なアドバイスを行うものではありません。皆様が本コラムを利用したことにより被ったいかなる損害についても、一切の責任を負いません。具体的なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家にご相談ください。

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