お問い合わせ窓口領域における生成AI活用の可能性

業務改善
公開日:2024.3.27
更新日:2024.3.27
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イラストは株式会社エーアイスクエアがChatGPT Plusを利用して作成

2022年にChatGPTが登場して以降、飛躍的なスピードで生成AIの研究・開発・業務活用が進んでいます。コンタクトセンターやヘルプデスクをはじめとしたお問い合わせ窓口業務に関しても、人口減少や労働力不足を背景に、生成AIを活用した業務の高度化が推進されています。本コラムでは、生成AIの現状やお問い合わせ窓口領域における生成AIの活用可能性についてご紹介します。

目次

生成AIの現在状況

2024年3月現在、ChatGPTに留まらず、様々な生成AIが誕生しています。
代表的なサービスは以下です。

記載したサービスは一例です。他にも様々なサービスが公開されています。
有料版・無料版/BtoC向け・BtoB向け等混在しています。
種別 提供会社 サービス名
テキスト生成 OpenAI ChatGPT Plus
Google Gemini
Anthropic Claude3
Microsoft Microsoft Copilot
Notion Labs Notion AI
画像生成AI Stability AI Stable Diffusion
Midjourney Midjourney
Canva Text to Image
starryai Create Art with AI
NovelAI The AI Storyteller
動画生成AI VoyagerX Vrew
HeyGen AI Video Generator
Runway AI Runway Gen-2
OpenAI SORA

最近では、日本企業による日本語に特化したLLM※1モデルも登場し始めました。
参考リリース:ELYZA、グローバルモデルに匹敵する日本語LLMを開発

これらの生成AIは、機械翻訳・要約・質問応答・文章生成・言葉の言いかえや、画像生成、動画生成など、これまででは出来なかった幅広いタスクをこなすことが可能です。また、テキストや画像・動画の生成性能の向上と合わせて、近年では、マルチモーダルAI※2や、LAM※3も登場しつつあります。

生成AIの研究は、現在も全世界で進められており、今後も想像がつかないスピードで新しい技術が誕生する可能性が高い状況です。

※1 LLM(Large language Models)は、大量のデータと深層学習技術によって構築された言語モデルのことです。
※2 マルチモーダルAIは、画像、音声、テキストなどの異なる種類の情報を扱うAIのことです。
※3 LAM(large action model)は、人間の意図を理解し、実行する新しい基礎モデルのことです。

お問い合わせ窓口領域における生成AI活用の可能性

お問い合わせ窓口業務でも、幅広いタスクをこなせる生成AIを活用した業務の高度化・効率化が推進されています。コールセンター白書2023によると、日本のカスタマーサービスにおける生成AIニーズに関するアンケートで、「生成AIを既に活用している」もしくは「活用を検討中」と回答した割合が半数近くに達しています。

日本のカスタマーサービスにおける生成AIニーズに関するアンケート結果の画像

出典:コールセンター白書2023

また、「生成AIの活用成果で期待したい点は?」といったアンケートでは、「後処理業務の効率化」や「顧客対応の自動化」「バックオフィス業務の自動化や効率化」で生成AI活用が期待されており、お問い合わせ窓口業務においても、生成AIへの期待値が高いことが伺えます。

「生成AIの活用成果で期待したい点は?」といったアンケート結果の画像

出典:コールセンター白書2023

お問い合わせ窓口領域における具体的なタスクと事例

このような状況の中で、具体的にはチャットボットやボイスボット、要約、FAQ生成など、多岐にわたるタスクでの利用が検討されています。

お問い合わせ窓口領域における具体的なタスクと事例の画像

エーアイスクエア社作成

また、具体的な活用事例も出てきており、実際に効果も出てきています。

事例1

インターネット写真サービス事業を展開するフォトクリエイト社のオールスポーツコミュニティでは、お問い合わせの自動化を目的に、回答生成チャットボットを一般公開しています。
サイトURL:https://support.allsports.jp/hc/ja

事例2

受託設備メーカーのLIXIL社では、コンタクトセンターでの応対業務における履歴入力時間の削減のために生成要約サービスを導入し、生産性向上を実現しています。
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000018.000062562.html

事例3

三井住友トラスト・ホールディングスでは、コンタクトセンター十数拠点に大規模言語モデルを導入し、ナレッジの自動生成に取り組み始めました。
事例ニュース:https://it.impress.co.jp/articles/-/25319

また、本コラムページを運営する、進化系ERPパッケージベンダーのGRANDIT社においても、ヘルプデスクへの問合せ応対時間の削減を目的に、生成AIアシスタント導入の実証実験を開始しています。
プレスリリース:https://www.miraimil.jp/information/detail_20240328.php

飛躍的な技術進化と日本を取り巻く課題を背景に、今後も生成AIを活用した具体的な事例は増加していくと考えられます。

生成AIの課題と適用に向いている業務

事例も出始めた生成AIですが、一方で複数の課題があり、生成AIの特徴を理解したうえで、業務で利用することが重要です。

生成AIの課題と配慮すべきポイントの画像

エーアイスクエア社作成

特に、「情報の正確性(Hallucination)」「機密情報漏洩リスク」「返答時間」の3つは非常に重要で、これらの課題に配慮した上で、「目的が達成出来るか否か」を考えることがポイントです。例えば、「返答時間が遅いことで、現状のオペレーションよりも非効率になる業務」には、生成AIの適用は未だ不向きです。

生成AIで可能な業務と不可能な業務を表した画像

エーアイスクエア社作成

上記課題を理解した上で、現在もっとも利用に適しているのは「ある程度の品質担保で問題ない業務」や「多少の遅延が許される業務」です。例えば、チャットボットなどの自動応答ツールは、「ある一定の回答品質が担保出来、より詳しい説明は人による電話対応に委ねる」といったオペレーションフローが組めれば、利用が出来る可能性があります。また、メール問い合わせにおける返信文生成や、履歴作成に変わる要約での利用、窓口対応以外のFAQ作成やログ分析・集計作業などは、業務の効率化としてすぐに利用が出来ます。

まとめ

技術の飛躍的な進化を背景に、2024年は生成AIの活用が急速に進むと考えられます。しかしながら、どこまでいっても「人の業務の一部を高度化してくれるツール」に過ぎません。また、生成AIを搭載したサービスの運用には、業務面と技術面の両面で、一定の知見をもったメンバーでの体制構築が必要です。近年では、生成AIやAI・IT全般に関する資格試験の増加や、eラーニングサービスも増加しています。自社内でリスキリングを推進することで、生成AIを活用した業務改革がスピーディーに実現できます。まずはChatGPTやGeminiなどの生成AIサービスを触っていただき、興味のきっかけを作っていただければと思います。

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