固定資産の減損会計に関して③減損の兆候

会計・経理 税制
公開日:2023.10.18
更新日:2023.10.18
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ここ数回、固定資産の減損会計に関して、簡単に考え方や検討の流れに関して解説しています。
今回は初回に説明した「2、減損会計の検討の流れ②減損の兆候」を簡単に掘り下げたいと思います。
当会計基準を適用するにあたり、必ず検討が必要なステップであり、検討時は基準における例示項目の潰し込みが最低限必要になります。

「②減損の兆候
全ての固定資産に対して、減損の判定を行うわけではありません。あくまで減損が生じている可能性のある事象(減損の兆候)がある場合に、対象となる資産又は資産グループに対して減損損失を認識するかどうかの判定を行います」

初回の「2、減損会計の検討の流れ②減損の兆候」から抜粋

【1】減損が生じている可能性のある事象の例示

基準では、減損が生じている可能性のある事象の例示として、以下が挙げられています。あくまで例示なので、これらに限られません。
当該資産及び資産グループについて、例示に該当する場合は、次のステップ「減損損失の認識」の検討に進みます。

  1. 営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナスの場合
  2. 使用範囲又は方法について回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合
  3. 経営環境の著しい悪化の場合
  4. 市場価格の著しい下落の場合

【2】減損が生じている可能性のある事象の例示

【1】で挙げられた4つの例示に関して、具体的な内容等を解説していきます。

  1. 営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナスの場合

    資産又は資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが、継続してマイナスとなっているか、又は、継続してマイナスとなる見込みである場合には、減損の兆候となります。

    (ポイント)

    • 「営業活動から生ずる損益」とは、営業上の取引に関連して生ずる損益であり、これには、当該資産又は資産グループの減価償却費や本社費等の間接的に生ずる費用が含まれます。一方、支払利息など財務活動から生ずる損益や利益に関連する金額を課税標準とする税金は含まれません。
    • 「継続してマイナス」とは、おおむね過去2期がマイナスであったことを指しますが、当期の見込みが明らかにプラスとなる場合は該当しません。また、「継続してマイナスとなる見込み」とは、前期と当期以降の見込みが明らかにマイナスとなる場合を指します。
    • 事業の立上げ時など予め合理的な事業計画が策定されており、当該計画にて当初より継続してマイナスとなることが予定されている場合、実際のマイナスの額が当該計画にて予定されていたマイナスの額よりも著しく下方に乖離していないときには、減損の兆候には該当しません。
  2. 使用範囲又は方法について回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合

    資産又は資産グループが使用されている範囲又は方法について、例えば、以下のような当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化が生じたか、又は、生ずる見込みである場合には、減損の兆候となります。

    (例示)

    • 当初の予定よりも著しく早期に資産又は資産グループを除却や売却などにより処分すること。
    • 資産又は資産グループを当初の予定又は現在の用途と異なる用途に転用すること。
    • 資産又は資産グループが遊休状態になり、将来の用途が定まっていないこと。
    • 建設仮勘定に係る建設について、計画の中止又は大幅な延期が決定されたことや当初の計画に比べ著しく滞っていること。
  3. 経営環境の著しい悪化の場合

    資産又は資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化したか、又は、悪化する見込みである場合には、減損の兆候となります。「経営環境が著しく悪化した」場合とは、例えば、以下が挙げられます。

    (例示)

    • 材料価格の高騰や、製・商品店頭価格やサービス料金、賃料水準の大幅な下落、販売量の著しい減少などが続いているような市場環境の著しい悪化。
    • 技術革新による著しい陳腐化や特許期間の終了による重要な関連技術の拡散などの技術的環境の著しい悪化。
    • 重要な法律改正、規制緩和や規制強化、重大な法令違反の発生などの法律的環境の著しい悪化。
  4. 市場価格の著しい下落の場合

    資産又は資産グループの市場価格が著しく下落したことは、減損の兆候となります。

    (ポイント)

    • 「市場価格が著しく下落したこと」には、少なくとも市場価格が帳簿価額から50%程度以上下落した場合が該当します。
    • 資産グループについては、資産グループ全体の市場価格が把握できない場合でも、主要な資産の市場価格が著しく下落した場合や、資産グループの帳簿価額のうち土地の帳簿価額が大きな割合を占め、当該土地の市場価格が著しく下落した場合も含まれます。
    • 固定資産については、市場価格が観察可能な場合は多くないため、一定の評価額や適切に市場価格を反映していると考えられる指標が容易に入手できる場合(容易に入手できる評価額や指標を合理的に調整したものも含まれる)には、これらを減損の兆候を把握するための市場価格とみなして使用します。

容易に入手できると考えられる土地の価格指標の概要

種類 公示価格 都道府県基準地価格 路線価による相続税評価額 固定資産税評価額
評価時点 毎年1月1日 毎年7月1日 毎年1月1日 3年ごとに基準年を置き、その年の1月1日
公表時期 毎年3月下旬頃 毎年9月下旬頃 毎年8月中旬頃 基準年の3月頃
評価目的
  • 一般の土地取引価格に指標を与える
  • 公共用地の取得価格算定の規準
  • 国土利用計画法による規制の適正化及び円滑化
  • 公示価格の補完
  • 相続税や贈与税の課税基準
  • 固定資産税等の課税基準
備考 都市計画区域のみ ほぼ公示価格と同一価格水準(都市計画区域外含む) 公示価格の80%程度 公示価格の70%程度

コラム記載の内容は、あくまで個人的見解になります。

以上

参考

固定資産の減損に係る会計基準

固定資産の減損に係る会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第6号)

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