固定資産の減損会計に関して

会計・経理 税制
公開日:2023.8.22
更新日:2023.8.22
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今回は、固定資産の減損会計に関して、簡単に考え方や検討の流れに関して解説したいと思います。
よく新聞等で目にする話だとは思いますが、何の為にこのような会計処理を行っているのかを正確に理解できている人は少ないと思います。考え方や検討の流れに関して、大枠だけでも正確に理解して頂ければと思います。

【1】基本的考え方

事業用の固定資産については、通常、市場平均を超える成果を期待して事業に使用されている為、市場の平均的な期待で決まる時価が変動しても、企業にとっての投資の価値がそれに応じて変動するわけではなく、また、投資の価値自体も、投資の成果であるキャッシュ・フローが得られるまでは実現したものではありません。その為、事業用の固定資産は取得原価から減価償却等を控除した金額で評価され、損益計算においては、そのような資産評価に基づく実現利益が計上されています。

ただし、事業用の固定資産であっても、その収益性が当初の予想よりも低下し、資産の回収可能性を帳簿価額に反映させなければならない場合があります。

このような場合における固定資産の減損処理は、事業用資産の過大な帳簿価額を減額し、将来に損失を繰り延べない為に行われる会計処理です。
これは、金融商品に適用されている時価評価とは異なり、資産価値の変動によって利益を測定することや、決算日における資産価値を貸借対照表に表示することが目的ではなく、取得原価基準の下で行われる帳簿価額の臨時的な減額です。

<ポイント>

  • 固定資産の減損処理は、将来に損失を繰り延べない為に、資産の回収可能性を帳簿価額に反映させる、つまり事業用資産の過大な帳簿価額を減額する会計処理です。
  • 固定資産の減損処理は、あくまで取得原価基準の下で行われる帳簿価額の臨時的な減額であり、時価評価とは異なります。

【2】減損会計の検討の流れ

以下の流れ(①→④の順番)で、固定資産の減損の検討が進みます。
①②は必ず実施。②に該当すれば、③の検討。③に該当すれば④の検討と進んでいきます。

  1. 資産のグルーピング

    複数の資産が一体となって独立したキャッシュ・フローを生み出す場合には、減損損失を認識するかどうかの判定及び減損損失の測定に際して、合理的な範囲で資産のグルーピングを行う必要があります。
    資産のグループとは、他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位です。

  2. 減損の兆候

    全ての固定資産に対して、減損の判定を行うわけではありません。あくまで減損が生じている可能性のある事象(減損の兆候)がある場合に、対象となる資産又は資産グループに対して減損損失を認識するかどうかの判定を行います。
    当ステップでは、減損が生じている可能性がある事象(減損の兆候)がある資産又は資産グループを洗い出します。

  3. 減損損失の認識

    減損損失の測定は、将来キャッシュ・フローの見積りに大きく依存します。将来キャッシュ・フローが約定されている場合の金融資産と異なり、成果の不確定な事業用資産の減損は、測定が主観的にならざるを得ません。その点を考慮すると、減損の存在が相当程度に確実な場合に限って減損損失を認識することが適当です。
    基準は、減損の兆候がある資産又は資産グループについて、これらが生み出す割引前の将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回るときには、減損の存在が相当程度に確実であるとし、そのような場合には減損損失を認識することを求めています。
    当ステップでは、減損の存在が相当程度に確実である資産又は資産グループを洗い出します。

  4. 減損損失の測定

    前項において、減損損失を認識すべきであると判定された資産又は資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失とします。

コラム記載の内容は、あくまで個人的見解になります。

以上

参考

固定資産の減損に係る会計基準

固定資産の減損に係る会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第6号)

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