インボイス制度とは?税理士が解説する基礎知識
「インボイス制度」。多くの方が耳にした事はあると思います。今回は初歩の部分(そもそもの部分)につき、簡単に解説を行いたいと思います。様々な細かい情報が飛び交っていますが、実務に携わっている観点で見ると、そもそもの理解が追い付いていない方がたくさんいらっしゃるというのが本音です。今回は枝葉末節にこだわるのではなく、全体像に関して簡単に解説したいと思います。
シンプルに全体像が分かる文言は以下になります。(国税庁作成の公式リーフレットより抜粋)
インボイス制度の下では、税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「インボイス発行事業者」(適格請求書発行事業者)が交付する「インボイス」(適格請求書)等の保存が消費税の仕入税額控除の要件となります。
ポイントは以下になります。
- 「税務署長に申請して登録を受けた」
- 「課税事業者である」
- 「インボイス発行事業者が交付するインボイス」
- 「保存が消費税の仕入税額控除の要件」
順を追って簡単にポイントを解説します。
- 「インボイス発行事業者」になる為には、税務署長に登録申請手続を行い、登録を受ける必要があります。
なおインボイス制度開始は令和5年10月1日からです。原則として令和5年3月31日までに登録申請手続を行う必要があります。 - 「インボイス発行事業者」の登録を受ける為には、課税事業者である必要があります。
課税事業者になると、仮に基準期間の課税売上高が1,000万円以下となっても、消費税の申告が必要になります。 - 売手側の視点として、「インボイス発行事業者」には、取引の相手方の求めに応じて、インボイスを交付する義務及び交付したインボイスの写しを保存する義務が課されます。
インボイスの記載事項は以下になります。(簡易インボイスの場合、書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称は不要です)
- インボイス発行者の氏名又は名称及び登録番号
- 取引内容
- 取引年月日
- 税率ごとに区分して合計した対価の額及び適用税率
- 消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
- 買手側の視点として、一定の事項を記載した帳簿及び請求書等の保存が消費税の仕入税額控除の要件になります。
仕入税額控除の為には、以下の請求書等の保存が必要です。
- インボイス又は、簡易インボイス
- 買手が作成する仕入明細書等(インボイスの記載事項が記載されており、課税仕入れの相手方(売手)の確認を受けたもの)
- 上記の書類に係る電磁的記録
制度開始後は、免税事業者(=「インボイス発行事業者」登録なしの事業者)から、仕入を行った場合、その仕入に関する消費税額に関しては、仕入税額控除ができない事になります。(経過措置有)
つまり、免税事業者から仕入を行う場合で、販売条件等が変わらない場合、制度開始前と比べて、買手の納付する消費税額は多くなります。
(備忘:納付する消費税額の計算方法)
売上の消費税額-仕入や経費の消費税額=納付する消費税額
細かい論点は多々あるものの、一般的なそもそもの理解に関して、解説してみました。
様々な特集や解説が行われていますが、国税庁の「インボイス制度特設サイト」が公式であり、お勧めとなります。
※コラム記載の内容は、あくまで個人的見解になります。
以上
- 第1回:なぜ消費税は理解しづらいのか。法人税と消費税の計算方法の違い
- 第2回:なぜ利益が出ているのに、お金がないのか
- 第3回:令和4年1月1日施行、短期退職手当等について
- 第4回:「収益認識に関する会計基準」のポイント・対応状況について
- 第5回:中小企業向けの令和4年度税制改正のポイント
- 第6回:不正会計は他人事ではない
- 第7回:会計監査人(監査法人)が実施する棚卸立会に関して
- 第8回:会計監査人(監査法人)が実施する確認状関連の作業に関して
- 第9回:期末監査における会計監査スケジュール及び会計監査の実施内容に関して
- 第10回:決算日後に発生した「後発事象」。その種類と対応方法。
- 第11回:中小企業でも必要!会社の大小問わず必要な内部統制の解説