決算日後に発生した「後発事象」。その種類と対応方法。
3月決算会社は、当月末に有価証券報告書の提出が迫っていると思います。
決算の最後の局面でよく話に出るのが「後発事象」です。
なんとなく耳にした事がある人は多いのではないでしょうか。
本日は、この「後発事象」に関して、解説を行いたいと思います。
<1>後発事象の定義に関して
決算日後に発生した会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす会計事象です。このうち、監査対象となる後発事象は、監査報告書日までに発生した後発事象の事をいいます。
具体的には以下の<2>の通り2パターンに分類されます。
<2>後発事象の分類等
<2-1>修正後発事象
1. 定義
決算日後に発生した会計事象ではあるが、その実質的な原因が決算日現在において既に存在しており、決算日現在の状況に関連する会計上の判断ないし見積をする上で、追加的ないしより客観的な証拠を提供するものとして考慮しなければならない会計事象。
2. 財務諸表への影響
重要な修正後発事象については、財務諸表の修正を行うことが必要です。
修正後発事象の例
- 決算日後における訴訟事件の解決により、決算日において既に債務が存在したことが明確となった場合には、単に偶発債務として開示するのではなく、既存の引当金の修正又は新たな引当金の計上を行わなければなりません。
- 決算日後に生じた販売先の倒産により、決算日において既に売掛債権に損失が存在していたことが裏付けられた場合には、貸倒引当金を追加計上しなければなりません。
<2-2>開示後発事象
1. 定義
決算日後において発生し、当該事業年度の財務諸表には影響を及ぼさないが、翌事業年度以降の財務諸表に影響を及ぼす会計事象。
2. 財務諸表への影響
重要な開示後発事象については、会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する的確な判断に資するため、当該事業年度の財務諸表に注記を行うことが必要となります。
3. 開示後発事象の例(抜粋)
- 会社が営む事業に関する事象
- ・重要な事業の譲受、譲渡
- ・重要な合併、会社分割
- 資本の増減等に関する事象
- ・重要な新株の発行(新株予約権等の行使・発行を含む。)
- ・重要な資本金又は準備金の減少
- ・重要な株式交換、株式移転
- ・重要な自己株式の取得、処分、償却
- 資金の調達又は返済等に関する事象
- ・多額な社債の発行
- ・多額な社債の買入償還又は繰上償還(デット・アサンプションを含む。)
- ・多額な資金の借入
- 子会社等に関する事象
- ・子会社等の援助のための多額な負担の発生
- ・重要な子会社等の株式の売却
- ・重要な子会社等の設立
- ・株式取得による会社等の重要な買収
- ・重要な子会社等の解散・倒産
- 会社の意思にかかわりなく蒙ることとなった損失に関する事象
- ・火災、震災、出水等による重大な損害の発生
- ・外国における戦争の勃発等による重大な損害の発生
- その他
- ・重要な経営改善策又は計画の決定(デット・エクイティ・スワップを含む。)
- ・重要な係争事件の発生又は解決
- ・重要な資産の担保提供
- ・投資に係る重要な事象(取得、売却等)
4. ポイント
- 「翌事業年度以降の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす事象」であること
ここでの後発事象は会計事象であり、翌事業年度以降の財務諸表に直接影響を及ぼす既発生事象のほか、影響を及ぼすことが確実に予想される事象も含まれます。なお、財務諸表によって開示される財務情報には、注記事項も含まれます。 - 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす事象」であること
後発事象として開示される事象は、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼすものです。「重要な影響を及ぼす事象」とは、経営活動の中で臨時的、非経常的に生ずる事象であって、その影響が質的・金額的に重要性があるものです。 - 「決算日後に発生した事象」であること
後発事象は、「決算日後に発生した事象」ですが、この場合の「発生」の時点は、次のように解する必要があります。- (a) 新株の発行等のように会社の意思決定により進めることができる事象
・・・・・・当該意思決定があったとき - (b) 合併のように会社が他の会社等との合意等に基づいて進めることができる事象
・・・・・・当該合意等の成立又は事実の公表があったとき - (c) 災害事故等のように会社の意思に関係のない事象
・・・・・・当該事象の発生日又は当該事象を知ったとき
- (a) 新株の発行等のように会社の意思決定により進めることができる事象
<3>最後に
3月決算の会社で、仮に4月に取引先が倒産した場合、修正後発事象に該当する可能性があります。当該会計事象(倒産)が、質的・金額的に重要な修正後発事象に該当した場合、決算時の貸倒引当金の見積を、この事象に基づいて検討する必要があります。
ex.
22年3月決算の会社P社。取引先A社が22年4月に倒産
22年3月以前にA社倒産の実質的な原因が生じていると判断すれば、22年3月期のP社決算において、当該倒産の会計事象を織り込む必要があります。
(A社に対する貸倒引当金の追加計上)
開示後発事象に関しては、比較的会社の意思によって、コントロールできる場合が多いです。重要な開示後発事象に該当し、注記対象となるのを防ぐ為、意思決定等をあえて、監査報告書日以降に行う実務は普通に見受けられます。
※コラム記載の内容は、あくまで一般的な例の記載、個人的見解になります。
会社の実態により、異なる場合があります。
以上