傷病手当金の支給対象期間の変更

法務・労務
公開日:2022.2.8
更新日:2022.2.8
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治療と仕事の両立の観点から、2022年1月1日から傷病手当金の支給期間が通算化されることとなりました。また、多くの会社では社員が傷病で長期欠勤する場合は、休職の規定を設けていると思います。
今回は、休職の基本的な考え方と、傷病手当金のルール変更について説明していきます。

休職について

社員が、病気や怪我などで長期にわたって会社を休む場合、一般的にその社員は「休職」という扱いになります。休職は、労働基準法などの法律に基づく制度ではありません。そのため、会社は就業規則や給与規程などで、休職の期間や復職に際してのルール、休職期間中の給与などについて明確に定めておく必要があります。

傷病手当金について

休職中は、無給としている会社が一般的です。給与は無給になっても、私傷病(業務外でのケガや病気)により休職している社員本人には、医師が労務不能であることを証明した期間について、給与の一定金額が補償されることになります。これが、「傷病手当金」です。

傷病手当金の支給金額の計算式は以下のとおりです。

1日あたりの傷病手当金=
(支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額)÷30日×3分の2
*支給開始日とは、一番最初に給付がされる日のことをいいます。

具体例でみていきたいと思います。支給開始日以前の継続した12ヶ月間の標準報酬月額がすべて30万円だったとします。この場合の1日当たりの傷病手当金は以下のようになります。

(30万円×12ヶ月)÷12ヶ月÷30日×3分の2
30万円×12ヶ月=3,600,000円
3,600,000円÷12ヶ月=300,000円
300,000円÷30日=10,000円(1の位を四捨五入)
10,000円×3分の2=6,666.66…円=6,667円(小数点以下第1位を四捨五入)

傷病手当金の支給期間の通算化について

2022年1月1日から、傷病手当金の支給期間が通算化されることとなりました。これまでは、支給開始日から起算して1年6ヶ月経過後は傷病手当金が支給されないこととなっていました。そのため、毎月、休職と出勤を交互に行っている場合でも、支給開始日から暦日で1年6ヶ月を経過してしまうと受給することはできませんでした。

今回の法改正によって、支給開始日から「通算して」1年6ヶ月まで支給されることになりました。実際に支給される日数は、まず支給開始日から暦日で1年6ヶ月を数え、通算支給日数がその日数(550日程度)に達するまでが支給されることになります。
ただし、支給開始日が2021年7月1日以前の場合には、これまでどおり支給を開始した日から最長1年6ヶ月となります。

社会保険の取り扱い

社会保険料(健康保険・厚生年金保険・介護保険)については、休職をしていたとしても納付する必要があります。口座振替で社会保険料を納付している会社は、被保険者全員の保険料が自動的に引き落としされます。そのため、休職者の自己負担分を徴収していなくても会社が負担した形のまま、気づかずに何ヶ月も経ってしまうこともあるようです。

休職期間中は、休職する社員の収入も少なくなりますから、復帰するまで会社が立て替えることもあります。しかし、あまりに休職期間が長引くと会社の負担も大変になるばかりか、まとめて返金する社員にとっても大きな負担です。先ほどの傷病手当金は、賃金の締め切り日に合わせて毎月支給申請することが一般的です。基本的には毎月、長くても3ヶ月に一度くらいは、休職中の社員から振込や現金で会社に支払って貰うようにすることが肝心です。

なお、就業規則や給与規程に休職時の給与の取り扱いについて記載がない場合は、原則として過去の同じような事例に沿った扱いをしなければなりません。過去の事例がない場合は、ノーワーク・ノーペイの原則に従って休んでいる期間の給与について支払う必要はありません。しかし、社会保険料の徴収をはじめ、さまざまな取り扱いについては、基本的に本人との話し合いにより進めて行く必要があります。

休職に関しては、対応方法をしっかりと定めておかないと労務トラブルに発展するケースもあります。自社の就業規則を確認して休職の規定がない場合は、追加をした方が良いでしょう。

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