なぜ消費税は理解しづらいのか。法人税と消費税の計算方法の違い
本コラムでは、中小企業の皆様からよくご質問いただく税金について、できるだけイメージしやすいように解説していきます。第1回目は、法人税と消費税について説明します。
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職業柄、中小企業の社長に対して、法人税及び消費税の説明が求められます。 法人税は、比較的すぐに御理解頂ける事が多いですが、消費税は、すぐに御理解して頂けることは稀だと感じています。 なぜこのような事が起こるのでしょうか。 それは法人税と消費税の計算方法の違いを理解していない事が原因です。 以下で法人税及び消費税の計算方法及び法人税と消費税の計算方法の違いに関して簡単に御説明致します。
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法人税は、利益に対しての課税です。
法人税の計算方法は、以下になります。
① 試算表の利益から、会計上と税務上の差異を調整
② ①から 事業税を支払った額及び繰越欠損金を差引
③ ②に税率を乗じて税額の決定
①ですが、中小企業は、そもそも税務基準に基づき会計処理を行っている事がほとんどです。その為、会計上と税務上の差異は少なく、調整不要な場合が多いです。
ここでは無視してもらって結構です。
②ですが、事業税は、法人税の計算において、支払ったタイミングで損金算入(利益の圧縮)が可能です。また繰越欠損金がある場合、同様に利益の圧縮が可能です。
従って、単純に税引前当期純利益から、以下を差し引いた金額に税率を乗じて法人税額が計算されます。
- 事業税を支払った額
- 繰越欠損金
このように、中小企業においては、法人税等の税額に関しては、税引前当期純利益等の情報から、予測が可能です。
また税引前当期純利益と法人税の関連性が強い為、直感的に理解しやすいといえます。
(例えば②の影響が少ない場合、税引前当期純利益と法人税の割合は、毎年ある程度一定になり、予測がしやすいと言えます)
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消費税の概念は単純です。
法人税とは異なり、消費税は利益に対しての課税ではありません。
預かっている消費税の純額を計算しているだけです。
消費税の計算方法は以下になります。
預かった消費税-支払った消費税=支払うべき消費税(消費税の納付額)
消費税も計算の出発点は試算表になります。
ただ試算表の数値のうち、消費税がかかるもの、かからないものがある為、調整が必要です。
損益計算書のうち、消費税の影響がない(消費税がかからない)項目として、主に以下が挙げられます。
- 給料等(給料・法定福利費等)
- 減価償却
- 保険金
- 租税公課
- 利息
一方、貸借対照表のうち、消費税の影響がある(消費税がかかる)項目として、主に以下が挙げられます。
- 固定資産の購入等
調整が多い為、試算表の一部の数値から消費税額を予測することは難しく、この事が直感的な理解を妨げています。
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具体的に理解して頂く為に、以下の例を用意しました。
<例>
- 固定資産がなく、費用の大部分が給料であるA社
- 税金計算前の試算表の数値は売上100、給料▲55、経費▲20、税引前当期純利益25
- 消費税率10%
- 法人税等税率30%
- 事業税の当期中の支払▲5
- 繰越欠損金なし
このケースの場合、A社の各税金の計算は以下になります。
①法人税
(25ー5)×30%=6
②消費税
売上100→預かった消費税10
給料▲55→消費税はかからない為、支払った消費税ゼロ。
経費▲20→支払った消費税2
預かった消費税10から支払った消費税2を差し引いて、差額8。
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以上の通り、法人税と消費税の計算方法の違いを御説明しました。
計算方法の違いにより、見慣れている試算表の数値から調整が少ないのが法人税、調整が多いのが消費税です。それにより、直感的な理解ができるのか否かの違いが生まれており、消費税の方が理解しづらいと感じることが多いのではないでしょうか。
なお全体感の御説明であり、様々な論点は割愛している事にご留意ください。
本コラムは、一般的な参考情報の提供のみを目的に作成されており、会計、税務およびその他の専門的なアドバイスを行うものではありません。皆様が本コラムを利用したことにより被ったいかなる損害についても、一切の責任を負いません。具体的なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家にご相談ください。