役員に対する給与の留意事項

会計・経理 税制
公開日:2024.12.17
更新日:2024.12.17
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役員給与はベーシックな論点です。しかし、どの法人にも影響があり、誤った際の税務リスクは比較的高いと考えられます。今回はいったん簡単にまとめてみたいと思います。

(1)概要

法人が役員に対して支給する給与の額のうち、次に掲げる以下のいずれにも該当しないものの額は損金の額に算入されません。

  • 定期同額給与
  • 事前確定届出給与
  • 一定の業績連動給与

※ただし上記のいずれかに該当するものであっても、不相当に高額な部分の金額は、損金の額に算入されません。

今回は、定期同額給与及びに関して、簡単にまとめてみたいと思います。

(2)定期同額給与

定期同額給与は、次にいずれかに該当する給与をいいます。

  1. 支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与(以下「定期給与」)で、その事業年度の各支給時期における支給額または支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額であるもの
  2. 継続的に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの
  3. (給与改定の場合)
    定期給与の額につき、次に掲げる改定(以下「給与改定」)がされた場合における、その事業年度開始の日または給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日またはその事業年度終了の日までの間の各支給時期における支給額または支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額であるもの

    A:事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までにされる定期給与の額の改定

    B:事業年度において役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情(以下「臨時改定事由」)により実施された、これらの役員に係る定期給与の額の改定

    C:その事業年度において、その法人の経営状況が著しく悪化したこと、その他これに類する理由

特に上記Cの論点が、実務上で問題になりやすいと思われます。
(3)で解説したいと思います。

(3)経営状態が著しく悪化したこと、その他これに類する理由

「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」とは、経営状況が著しく悪化した事など、やむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情がある事をいいます。
財務諸表の数値が相当程度悪化したことや倒産の危機に瀕したことだけではなく、経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じていれば、これも含まれます。
ここでいう第三者である利害関係者との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情の例としては以下になります。

対株主 対取引銀行等 対取引先等
具体例 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合 業績や財務状況又は資金繰りが悪化した為、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合
留意事項 株主が不特定多数の者からなる法人であれば、業績等の悪化が直ちに役員の評価に影響を与えるのが一般的であると思われますので、通常はこのような法人が業績等の悪化に対応して行う減額改定がこれに該当します。
一方、同族会社のように株主が少数の者で占められ、かつ役員の一部の者が株主である場合や株主と役員が親族関係にあるような会社については、役員給与の額を減額せざるを得ない客観的かつ特別の事情を具体的に説明できるようにしておく必要があることに留意が必要になります。
取引銀行との協議状況等により、これに該当することが判断できるものと考えられます。 策定された経営状況の改善を図る為の計画によって判断できるものと考えられます。この場合、その計画は取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保することを目的として策定されるものであるので、利害関係者から開示等の求めがあればこれに応じられるものということになります。
全体的留意事項① 上記以外の場合であっても、経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情があるときには、減額改定をしたことにより支給する役員給与は定期同額給与に該当すると考えられます。
この場合にも、役員給与の額を減額せざるを得ない客観的な事情を具体的に説明できるようにしておく必要があります。
全体的留意事項② 業績や財務状況、資金繰りの悪化といった事実が生じていたとしても、利益調整のみを目的として減額改定を行う場合には、やむを得ず役員給与の額を減額したとはいえないことから、業績悪化改定事由に該当しません。

以上

<参考>
No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)|国税庁

役員給与に関するQ&A

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