法人税、住民税及び事業税に関する会計処理及び開示に関して

今回は法人税、住民税及び事業税に関する会計処理及び開示の基礎的な部分に関して、解説したいと思います。
あまり知られていませんが、会計基準が存在し、更正等の場合における会計処理及び開示についても規定されています。参考にして頂ければと思います。
(1)更正等の会計処理
- 過年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等について、更正等により追加で徴収される可能性が高く、当該追徴税額を合理的に見積ることができる場合
- 誤謬に該当するときを除き、原則として、当該追徴税額を損益に計上
- 更正等による追徴に伴う延滞税、加算税、延滞金及び加算金については、当該追徴税額に含めて処理する
- 過年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等について、更正等により還付されることが確実に見込まれ、当該還付税額を合理的に見積ることができる場合
- 誤謬に該当するときを除き、当該還付税額を損益に計上
- 過年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等について、更正等により追徴税額を納付したが、当該追徴の内容を不服として法的手段を取る場合であり、還付されることが確実に見込まれ、当該還付税額を合理的に見積ることができる場合
- 誤謬に該当するときを除き、当該還付税額を損益に計上
ケース | 条件1 | 条件2 |
---|---|---|
更正等により追加で徴収される場合 | 追加で徴収される可能性が高い | 追徴税額が合理的に見積可能 |
更正等により還付される場合 | 還付されることが確実に見込まれる | 還付税額が合理的に見積可能 |
更正等により追徴税額を納付したが、当該追徴の内容を不服として法的手段を取る場合 | 還付されることが確実に見込まれる | 還付税額が合理的に見積可能 |
(2)開示
- 当事業年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等
①損益計算書項目
- 法人税、住民税及び事業税(所得割)
税引前当期純利益(又は損失)の次に、法人税、住民税及び事業税などその内容を示す科目をもって表示
- 事業税(付加価値割及び資本割)
原則として、販売費及び一般管理費として表示
※合理的な配分方法に基づき、その一部を売上原価として表示することが可能
②貸借対照表項目
- 法人税、住民税及び事業税等のうち納付されていない税額
流動負債の区分に「未払法人税等」などその内容を示す科目をもって表示
- 法人税、住民税及び事業税等の税額が、中間申告により納付された税額を下回る場合等により還付されるとき、当該還付税額のうち受領されていない税額
流動資産の区分に「未収還付法人税等」などその内容を示す科目をもって表示
- 法人税、住民税及び事業税(所得割)
- 更正等による追徴及び還付
- 法人税、住民税及び事業税(所得割)の更正等による追徴税額及び還付税額
法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)を表示した科目の次に、その内容を示す科目をもって表示
※金額の重要性が乏しい場合、法人税、住民税及び事業税(所得割)に含めて表示することが可能
- 事業税(付加価値割及び資本割)の更正等による追徴税額及び還付税額
原則として、損益計算書の販売費及び一般管理費として表示
※合理的な配分方法に基づき、その一部を売上原価として表示することが可能
- 法人税、住民税及び事業税等の更正等による追徴税額のうち、納付されていない税額
当事業年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等のうち納付されていない税額に含めて表示
- 法人税、住民税及び事業税等の更正等による還付税額のうち、受領されていない税額
当事業年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等の還付税額のうち受領されていない税額に含めて表示
①損益計算書項目
②貸借対照表項目
※当基準における用語の定義
「更正」とは、法人税、住民税及び事業税等について、提出した納税申告書に記載された課税標準又は税額の計算が法令に従っていなかった場合や、その他当該課税標準又は税額が税務署長又は地方公共団体の長の調査したところと異なる場合に、その調査により、当該納税申告書に係る課税標準又は税額を変更することをいいます。
「修正申告」とは、法人税、住民税及び事業税等について、提出した納税申告書に納付すべきものとして記載した税額に不足額がある場合や、提出した納税申告書に記載した純損失の金額が過大であった場合に、当該納税申告書に記載された課税標準又は税額を修正する納税申告書を税務署長又は地方公共団体の長に提出することにより、提出した納税申告書に係る課税標準又は税額を変更することをいいます。
なお、更正及び修正申告を「更正等」として、当基準上は取り扱っています。
以上
<参考>
法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準(企業会計基準第27号)

- 第1回:なぜ消費税は理解しづらいのか。法人税と消費税の計算方法の違い
- 第2回:なぜ利益が出ているのに、お金がないのか
- 第3回:令和4年1月1日施行、短期退職手当等について
- 第4回:「収益認識に関する会計基準」のポイント・対応状況について
- 第5回:中小企業向けの令和4年度税制改正のポイント
- 第6回:不正会計は他人事ではない
- 第7回:会計監査人(監査法人)が実施する棚卸立会に関して
- 第8回:会計監査人(監査法人)が実施する確認状関連の作業に関して
- 第9回:期末監査における会計監査スケジュール及び会計監査の実施内容に関して
- 第10回:決算日後に発生した「後発事象」。その種類と対応方法。
- 第11回:中小企業でも必要!会社の大小問わず必要な内部統制の解説
- 第12回:インボイス制度とは?税理士が解説する基礎知識
- 第13回:【ビジネスコラム】インボイス制度の解説②
- 第14回:【ビジネスコラム】インボイス制度の解説③
- 第15回:【ビジネスコラム】インボイス制度の解説④
- 第16回:【ビジネスコラム】インボイス制度の解説⑤
- 第17回:【ビジネスコラム】インボイス制度の解説⑥
- 第18回:【ビジネスコラム】雑所得と事業所得の判断基準の明確化
- 第19回:【ビジネスコラム】電子帳簿等保存制度の見直しに関して
- 第20回:従業員に対して職場つみたてNISAの奨励金を給付した場合の賃上げ促進税制(租税特別措置法第10条の5の4又は第42条の12の5)の取扱いについて
- 第21回:税効果会計に関する注記(計算書類・個別注記表)の解説
- 第22回:会計上の減価償却の解説
- 第23回:棚卸資産の評価に関して
- 第24回:固定資産の減損会計に関して
- 第25回:固定資産の減損会計に関して②資産のグルーピング
- 第26回:固定資産の減損会計に関して③減損の兆候
- 第27回:固定資産の減損会計に関して③減損損失の認識
- 第28回:固定資産の減損会計に関して④減損損失の測定
- 第29回:新リース会計基準に関して
- 第30回:新リース会計基準に関して2(リースの識別)
- 第31回:新リース会計基準に関して3(リース期間)
- 第32回:新リース会計基準に関して4(使用権資産及びリース負債の計上額)
- 第33回:新リース会計基準に関して5(借手リース、その他論点)
- 第34回:新リース会計基準に関して6(開示)
- 第35回:定額減税留意事項①(月次減税事務開始後)
- 第36回:定額減税留意事項②(年調減税事務)