新リース会計基準に関して5(借手リース、その他論点)

前回に引き続き、新リース会計基準の解説を行います。
今回は借手リースのその他論点に関して、具体的に解説したいと思います。
※当コラムはあくまで2023年5月2日に公表された公開草案をベースに記載します。今後の審議の状況等によって、内容が異なる可能性がある事に御留意ください。
(1)利息相当額の各期への配分
- 原則
借手のリース期間にわたり、利息法により配分する
借手のリース料は、原則として、利息相当額部分とリース負債の元本返済額部分とに区分計算し、前者は支払利息として会計処理を行い、後者はリース負債の元本返済として会計処理を行います。
借手のリース期間にわたる利息相当額の総額は、リース開始日における借手のリース料とリース負債の計上額との差額になります。 - 使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合の取り扱い
使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合は、次のいずれかの方法を適用することができます。
①借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法
この場合、使用権資産及びリース負債は、借手のリース料をもって計上し、支払利息は計上せず、減価償却費のみ計上②利息相当額の総額を、借手のリース期間中の各期に定額法で配分する方法
※使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合は以下になります。
未経過の借手のリース料の期末残高(リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することとしたものや、利息相当額を利息法により各期に配分している使用権資産に係るものを除く)が当該期末残高、有形固定資産及び無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合が10%未満である場合
(備考1)
IFRS第16号ではこれらの簡便的な取扱いは定められていません。実務の追加的な負担を軽減することを目的として、現リース会計基準で導入したものであり、実務において浸透していることから、これらの取扱いを踏襲しています
(備考2)
簡便的な取扱いは、現リース会計基準では所有権移転外ファイナンス・リース取引のみについて認められています。これらの対象範囲は、これまでオペレーティング・リース取引に分類されていたリース及びこれまで所有権移転ファイナンス・リース取引に分類されていたリースにまで拡大します
(2)使用権資産の償却
原資産の所有権が借手に移転すると認められるリース | 原資産の所有権が借手に移転すると認められるリース以外のリース | |
---|---|---|
減価償却方法 | 原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法 | 定額法等の減価償却方法の中から企業の実態に応じたものを選択適用 |
耐用年数 | 経済的使用可能予測期間 | 原則として、借手のリース期間 |
残存価額 | 合理的な見積額 | ゼロ |
- 原資産の所有権が借手に移転すると認められるリース
①減価償却方法
原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法②耐用年数
経済的使用可能予測期間③残存価額
合理的な見積額※「原資産の所有権が借手に移転すると認められるリース」とは以下のいずれかに該当するリースになります
- 契約上、契約に定められた期間(以下「契約期間」という)終了後又は契約期間の中途で、原資産の所有権が借手に移転することとされているリース
- 契約期間終了後又は契約期間の中途で、借手による購入オプションの行使が合理的に確実であるリース
- 原資産が、借手の用途等に合わせて特別の仕様により製作又は建設されたものであって、当該原資産の返還後、貸手が第三者に再びリース又は売却することが困難であるため、その使用可能期間を通じて借手によってのみ使用されることが明らかなリース
- 原資産の所有権が借手に移転すると認められるリース以外のリース
①減価償却方法
定額法等の減価償却方法の中から企業の実態に応じたものを選択適用②耐用年数
原則として、借手のリース期間③残存価額
ゼロ
<参考>
リースに関する会計基準(案)(企業会計基準公開草案第73号)
リースに関する会計基準の適用指針(案)(企業会計基準適用指針公開草案第73号)
以上

- 第1回:なぜ消費税は理解しづらいのか。法人税と消費税の計算方法の違い
- 第2回:なぜ利益が出ているのに、お金がないのか
- 第3回:令和4年1月1日施行、短期退職手当等について
- 第4回:「収益認識に関する会計基準」のポイント・対応状況について
- 第5回:中小企業向けの令和4年度税制改正のポイント
- 第6回:不正会計は他人事ではない
- 第7回:会計監査人(監査法人)が実施する棚卸立会に関して
- 第8回:会計監査人(監査法人)が実施する確認状関連の作業に関して
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- 第10回:決算日後に発生した「後発事象」。その種類と対応方法。
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- 第13回:【ビジネスコラム】インボイス制度の解説②
- 第14回:【ビジネスコラム】インボイス制度の解説③
- 第15回:【ビジネスコラム】インボイス制度の解説④
- 第16回:【ビジネスコラム】インボイス制度の解説⑤
- 第17回:【ビジネスコラム】インボイス制度の解説⑥
- 第18回:【ビジネスコラム】雑所得と事業所得の判断基準の明確化
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- 第20回:従業員に対して職場つみたてNISAの奨励金を給付した場合の賃上げ促進税制(租税特別措置法第10条の5の4又は第42条の12の5)の取扱いについて
- 第21回:税効果会計に関する注記(計算書類・個別注記表)の解説
- 第22回:会計上の減価償却の解説
- 第23回:棚卸資産の評価に関して
- 第24回:固定資産の減損会計に関して
- 第25回:固定資産の減損会計に関して②資産のグルーピング
- 第26回:固定資産の減損会計に関して③減損の兆候
- 第27回:固定資産の減損会計に関して③減損損失の認識
- 第28回:固定資産の減損会計に関して④減損損失の測定
- 第29回:新リース会計基準に関して
- 第30回:新リース会計基準に関して2(リースの識別)
- 第31回:新リース会計基準に関して3(リース期間)
- 第32回:新リース会計基準に関して4(使用権資産及びリース負債の計上額)