棚卸資産の評価に関して

会計・経理 税制
公開日:2023.7.18
更新日:2023.7.18
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会計上の棚卸資産の評価に関して、今回は簡単に解説したいと思います。

【1】対象資産

  1. 商品、製品、半製品、原材料、仕掛品等の資産であり、企業がその営業目的を達成するために所有し、かつ、売却を予定する資産※
  2. 売却を予定しない資産であっても、販売活動及び一般管理活動において短期間に消費される事務用消耗品等も含まれる

※売却には、通常の販売のほか、活発な市場が存在することを前提として、棚卸資産の保有者が単に市場価格の変動により利益を得ることを目的とするトレーディングを含む

<ポイント>

事務用消耗品等(貯蔵品等)も対象になります

【2】棚卸資産の評価

棚卸資産の評価方法は次のパターンに分かれます。

  • 通常の販売目的で保有する棚卸資産

    -営業循環過程内

    -営業循環過程外

  • トレーディング目的で保有する棚卸資産

以下で具体的に記載します。

(1)通常の販売目的で保有する棚卸資産

収益性の低下の有無に係る判断及び簿価切下げは、原則として個別品目ごとに行う。ただし、複数の棚卸資産を一括りとした単位で行うことが適切と判断されるときには、継続して適用することを条件として、その方法による。

  1. 営業循環内

    取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とする。この場合において、取得原価と当該正味売却価額との差額は当期の費用として処理する。

    ※正味売却価額

    売価(購買市場と売却市場とが区別される場合における売却市場の時価)から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除したもの

    ※売却市場において市場価格が観察できないときには、合理的に算定された価額を売価とする

    <ポイント>

    売価ではなく、そこから見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除したものが正味売却価額になります。金額的重要性が乏しい場合を除き、見積追加製造原価及び見積販売直接経費の検討が必要です。実務において、検討が漏れやすい論点になります。

  2. 営業循環外

    営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の棚卸資産について、合理的に算定された価額によることが困難な場合には、正味売却価額まで切り下げる方法に代えて、その状況に応じ、次のような方法により収益性の低下の事実を適切に反映するよう処理する。

    • 帳簿価額を処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む)まで切り下げる方法
    • 一定の回転期間を超える場合、規則的に帳簿価額を切り下げる方法

    <ポイント>

    一定の回転期間を超える場合、規則的に帳簿価額を切り下げる方法ですが、「回転期間」や、「規則的」に関して見積の要素が含まれる為、実務上の論点になります。

  3. (2)トレーディング目的で保有する棚卸資産

    • トレーディング目的で保有する棚卸資産については、時価をもって貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額(評価差額)は、当期の損益として処理する。
    • トレーディング目的で保有する棚卸資産として分類するための留意点や保有目的の変更の処理は、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)における売買目的有価証券に関する取扱いに準じる。

【3】開示

こちらに関しても次のパターンに分かれます。

  • 通常の販売目的で保有する棚卸資産
  • トレーディング目的で保有する棚卸資産

以下で具体的に記載します。
(注記は省略します)

(1)通常の販売目的で保有する棚卸資産の収益性の低下に係る損益の表示

  1. 通常の販売目的で保有する棚卸資産について、収益性の低下による簿価切下額は売上原価とするが、棚卸資産の製造に関連し不可避的に発生すると認められるときには製造原価として処理する。
  2. 収益性の低下に基づく簿価切下額が、臨時の事象に起因し、かつ、多額であるときには、特別損失に計上する。

※臨時の事象の例示

  • 重要な事業部門の廃止
  • 災害損失の発生

(2)トレーディング目的で保有する棚卸資産に係る損益の表示

トレーディング目的で保有する棚卸資産に係る損益は、原則として、純額で売上高に表示する。

コラム記載の内容は、あくまで個人的見解になります。

以上

参考

企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」

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