会計上の減価償却の解説

会計・経理 税制
公開日:2023.6.21
更新日:2023.6.21
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会計上の減価償却の取り扱い(主に法人税法との関連)に関して、今回は御説明したいと思います。

【1】会計上の減価償却(正規の減価償却)に関して

ポイントは以下になります。

  1. 減価償却は固定資産の適正な原価配分を行うことにより、損益計算を適正ならしめることが主たる目的です。従って、合理的に決定された一定の方式に従い、毎期計画的、規則的に実施する必要があります。
    これは企業会計上の「正規の減価償却」といわれるものであり、会社法に規定する相当の償却に一致します。
  2. 「正規の減価償却」は、一般に公正妥当と認められる減価償却の基準に基づき、自主的に行われるべきです。
  3. 耐用年数は、「資産」の単なる物理的使用可能期間ではなく、経済的使用可能予測期間に見合ったものでなければいけません。耐用年数は、対象となる「資産」の材質・構造・用途等のほか、使用上の環境、技術の革新、経済事情の変化による陳腐化の危険の程度、その他当該企業の特殊的条件も考慮して、各企業が自己の「資産」につき、経済的使用可能予測期間を見積もって自主的に決定すべきです。同一条件(種類・材質・構造・用途・環境等が同一であること)の「資産」について異なる耐用年数の適用は認められません。
  4. 残存価額は、固定資産の耐用年数到来時において予想される当該資産の売却価格又は利用価格から解体、撤去、処分等の費用を控除した金額であり、耐用年数と同様に、各企業が当該資産の特殊的条件を考慮して合理的に見積りを行う必要があります。
    つまり、減価償却費の計算にあたっての、耐用年数及び残存価額に関しては、本来であれば各企業が独自の状況を考慮して自主的に決定すべきものです。したがって、資産を取得する際には、原則として適切な耐用年数及び残存価額を見積もり、当該見積りに従って毎期規則的に減価償却を実施することが必要になります。

【2】法人税法との関連

背景

多くの企業が法人税法に定められた耐用年数を用いており、また同様に残存価額の設定についても、多くの企業が法人税法の規定に従っているのが現状です。

結論

法人税法に規定する普通償却限度額を「正規の減価償却費」として処理する場合においては、企業の状況に照らし、耐用年数又は残存価額に不合理と認められる事情のない限り、当面、監査上妥当なものとして取り扱うことができます。
つまり、法人税法に規定する減価償却を実施している場合は、不合理と認められる事情のない限り、会計上もそれを使用する事が可能です。
当容認処理に基づき、上場企業(日本基準採用会社)のほとんどの会社において、法人税法上の減価償却を会計上も使用しています。

留意事項

  1. 法人税法に定める耐用年数の改正に従って耐用年数を変更した場合も、その変更が明らかに実態と相違する等の事実が認められない限り、耐用年数を合理的なものにするための変更として取り扱うことができます。
  2. 自主的耐用年数から法人税法に定める耐用年数に変更することは、特別の事情のない限り、監査上妥当なものとして取り扱うことはできません。
  3. 租税特別措置法に規定する特別償却(一時償却)については、一般に「正規の減価償却」に該当しません。

【2】最後に

日本の会計基準においては、減価償却に関する具体的、包括的な基準は存在しません。従って、他の取り扱いと比べて、会計が法人税法の規定に引っ張られやすいという特徴を持っています。
IFRSにおいては、具体的な規定が存在する為、基準差異が生じる項目となります。

※コラム記載の内容は、あくまで個人的見解になります。

参考

減価償却に関する当面の監査上の取り扱い

(監査・保証実務委員会実務指針第81号)

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