中小企業も活用できる新しい資金調達方法!~「クラウドファンディング」の概要と会計上の取扱いを解説!~
近年の資金調達方法は、多様化しており、伝統的な方法にとどまらず、新しい手法やテクノロジーを活用した方法が増えています。
クラウドファンディングはインターネット上のプラットフォームを通じて資金を調達する方法で、テレビなどでも目にする機会が増えたのではないでしょうか?
本コラムでは、従来の方法に比べてよりオープンで柔軟な資金調達方法として注目されている「クラウドファンディング」のご紹介とクラウドファンディングで集めた資金の会計上の取扱いについて専門家のご意見をまじえてご紹介いたします。
【1】クラウドファンディングとは
クラウドファンディングは、インターネット上のプラットフォームを通じて、多くの人々から小額の寄付や投資を募り、プロジェクトやアイデアを資金面で支援する方法です。これは、起業家や創造的な個人が、資金を集めるための伝統的な手法に頼らずに、直接支援者からの資金を受け取ることができる手段として利用されます。
クラウドファンディングの仕組みは、一般的に以下の手順で進行します。
- プロジェクトの設定
資金を必要とするプロジェクトやアイデアを持つ人が、クラウドファンディングプラットフォームに登録し、プロジェクトの詳細や目標金額、資金の使い道などを設定します。
- 支援者の募集
プロジェクトが公開されると、インターネット上で広く告知され、支援者からの寄付や投資を募ります。支援者は、プロジェクトに対して金銭的な支援を行う代わりに、報酬や特典を受け取ることがあります。
- 目標金額の達成
プロジェクトは、あらかじめ設定された目標金額を達成する必要があります。支援者からの寄付や投資が目標金額に達した場合、プロジェクトは資金を受け取ることができます。目標金額に達しなかった場合、支援者には返金されるケースと、目標金額に達しなくてもプロジェクトが実行されるケースとがあります。
- プロジェクトの実行
目標金額が達成された場合、プロジェクトの実行が始まります。資金はプロジェクトオーナーに渡され、設定された目標を達成するためにプロジェクトを進めます。
クラウドファンディングは、起業家やアーティスト、中小企業や社会的な取り組みなど、さまざまな分野で利用されています。また、投資型のクラウドファンディングでは、資金提供者がプロジェクトに対して株式や利益の一部を得ることができる場合もあります。
【2】クラウドファンディングのメリット、デメリット
ここではクラウドファンディングのメリットとデメリットについて説明します。
メリット
- 資金調達の多様性
クラウドファンディングは、伝統的な資金調達方法に頼らずに資金を集めることができる手段です。プロジェクトやアイデアの魅力や社会的な影響力に基づいて、多くの人々から直接的な支援を受けることができます。
- マーケット検証と顧客関与
クラウドファンディングは、プロジェクトや商品のマーケット受容性を検証する良い手段となります。支援者からの反応やフィードバックを受けながらプロジェクトを進めることで、市場への適合性を確認し、顧客との関係を築くことができます。
- 認知度の向上と広告効果
クラウドファンディングキャンペーンは、プロジェクトや起業家の認知度を高める機会となります。プロジェクトのストーリーやビジョンを共有することで、支援者だけでなく広い範囲の人々にプロジェクトを知ってもらうことができます。
- 共同創造とコミュニティの形成
クラウドファンディングは、支援者とプロジェクトオーナーとの間で共同創造の関係を築くことができます。支援者はプロジェクトの成功に貢献することで、プロジェクトの一部として関与感を持つことができます。また、クラウドファンディングは、共通の関心事を持つ人々がコミュニティを形成する機会を提供します。
デメリット
- 目標金額未達成のリスク
クラウドファンディングでは、目標金額に達しない場合、資金を受け取ることができません。またはタイプによっては目標金額が集まらなくても、予定どおりにプロジェクトを実行しなければなりません。プロジェクトオーナーは目標金額を達成するために広報活動やマーケティングに努める必要があります。目標金額を達成できない場合、プロジェクトの実行に支障をきたす可能性があります。
- 時間と労力の要求
クラウドファンディングキャンペーンを成功させるためには、広報活動やマーケティング、コミュニケーションなど、多くの時間と労力が必要です。プロジェクトオーナーは、支援者との対話や更新、報告書の作成など、キャンペーン全体を管理するために十分なリソースを割かなければなりません。
- 競争と飽和
クラウドファンディングプラットフォームには数多くのプロジェクトが存在し、競争が激化しています。特に人気のあるカテゴリーや業界では、目立つためには十分な差別化とマーケティングが必要です。また、クラウドファンディング市場が飽和している場合、支援者の関心を引くのが難しくなる可能性があります。
- 手数料と手続き費用
クラウドファンディングプラットフォームは、プロジェクトオーナーに対して手数料を課すことがあります。手数料はプラットフォームごとに異なりますが、プロジェクトの調達金額に応じて一定の割合が取られることが一般的です。また、クラウドファンディングには手続き費用やトランザクション手数料などの追加費用もかかる場合があります。
- 成功後の責任と報告
クラウドファンディングで資金を調達した場合、プロジェクトオーナーは支援者に対して責任を持ちます。プロジェクトの進捗状況や成果物の報告、支援者への報酬や特典の提供など、支援者との関係を維持するための責任があります。
これらは一般的なクラウドファンディングのメリットとデメリットですが、個々のプロジェクトや状況によって異なる場合があります。プロジェクトオーナーは、自身の目標やリソース、市場の状況などを考慮して、クラウドファンディングの利用を検討する必要があります。
【3】クラウドファンディングプラットフォーム
クラウドファンディングプラットフォームは、クリエイティブなプロジェクトや社会起業家、中小企業が資金を集めるためのオンライン上のプラットフォームです。これらのプラットフォームは、プロジェクトオーナー(資金調達を必要とする人や組織)と支援者(資金提供をする人々)をつなぐ役割を果たします。以下に、代表的なクラウドファンディングプラットフォームをいくつか紹介します。
- Makuake
Makuakeは、株式会社マクアケが運営するクラウドファンディングサービス。2013年8月7日に株式会社サイバーエージェント内の新規事業としてスタート。 これまで世の中になかった新しい製品やサービスとの出会い場として、作り手や担い手の想いを知り、応援の気持ちを込めた購入体験ができるサービスです。
- CAMPFIRE
CAMPFIRE は、あらゆるファイナンスニーズに応えるべく、個人やクリエイター、企業、NPO、大学、地方自治体など、様々な挑戦を後押ししているクラウドファンディングです。
プロジェクトオーナーはCAMPFIRE にプロジェクトを掲載することで、支援という形で資金を集めることができ、支援者はプロジェクトへ支援することで、モノや体験などのリターンを得ることができます。 - READYFOR
資本主義では解決できない社会課題を解決するためのお金の流れをつくる「寄付・補助金のインフラ」として、従来の市場原理の外側にお金の流れをつくるインフラとなり、資本主義社会のアップデート。寄付金・補助金市場の課題解決に向けて取り組んでいます。
このように、資金調達の手段やプロジェクトの可視性向上や支援者とのコミュニケーション、マーケティングの機会を提供するために様々なクラウドファンディングプラットフォームが存在しますので、自身のプロジェクトに適したプラットフォームを選び、効果的なキャンペーンを展開することが重要です。
※各社の紹介内容は記事編集当時の公表内容などに基づいています。最新の情報や詳細な内容については、各社HPなどでご確認ください。
【4】クラウドファンディングの種類
クラウドファンディングは、さまざまな種類があります。以下に、一般的なクラウドファンディングの種類をいくつか紹介します。
- 寄付型クラウドファンディング
人々が特定のプロジェクトや目的に寄付を行います。支援者は一般的に市場価値のあるリターンや特典を受け取ることはありません。代表的な寄付型クラウドファンディングの例としては、非営利団体や社会的な課題に取り組むプロジェクトがあります。
- 購入型クラウドファンディング
支援者はプロジェクトオーナーから市場価値のあるリターンや特典を受け取ることができます。報酬は通常、プロジェクトに関連する製品、サービス、限定版アイテムなどの購入です。一般的には、製品の先行予約や限定版の入手、クリエイターとの直接のコミュニケーションなどが報酬として提供されます。
- 投資型クラウドファンディング
投資型クラウドファンディングでは、投資家が企業の株式を購入するなどにより、配当や将来のキャピタルゲインを期待することができます。この形式は、新興企業の成長や起業家の資金調達によく使用されます。
これらは一般的なクラウドファンディングの種類の一部ですが、他にもさまざまなバリエーションが存在します。
【5】クラウドファンディングで集めた資金の会計上の取扱いについて
前述のクラウドファンディング形態ですが、「投資型」については金融商品取引法の規制対象となっており参入障壁が高く事例も少ないようです。
「寄付型」と「購入型」については原則的に金融商品取引法の規制対象とはなっておらず「投資型」に比べると参入しやすくなっています。
この「寄付型」と「購入型」で資金調達をした場合、下記のように会計処理を行います。
- 寄付型
寄付型の場合、資金調達者である株式会社や合同会社などは受け取ったお金を「受贈益」として収益計上します。ただし、クラウドファンディングのプラットフォーム手数料やプロジェクト実行のための費用は株式会社や合同会社などの経費になりますので、実質的にはプロジェクトで集めた資金から実行費としてかかった費用を差し引いた分にたいして税金がかかることになります。また、NPO法人や公益法人等が寄付金を受け取った場合に、法人税は課税されません。
- 購入型
購入型の場合、まず将来製品やサービスを受け取るための対価として資金を受取り、その資金を利用して製品やサービスなどを開発します。そして完成した段階で資金提供者に製品やサービスを提供するため、代金先払いの時と同様の処理をします。
具体的には資金を受け取った時に「前受金」として計上し、製品引渡しやサービス提供時に「前受金」を「売上高」に振替えます。クラウドファンディングのプラットフォーム手数料やプロジェクト実行のための費用は寄付型の場合と同じく法人の経費になります。
なお、会計処理上の注意点は以下のとおりです。
- 購入型に見えて、寄付型の場合がある
実際にクラウドファンディングのサイトを見てみると、プロジェクト内容、目標金額、リターンが記載されています。ただし購入型クラウドファンディングであっても、資金調達額とリターンがアンバランスな場合(10万円調達してリターンは絵葉書1枚という場合など)は寄付型とみなされる場合がありますので注意が必要です。
- 消費税の取り扱い
購入型は通常の商品売買ですから、資金調達者が課税事業者であれば資金調達額は消費税の課税売上となります。一方、寄附は消費税法上、不課税取引ですので寄附型のクラウドファンディングでは資金調達額についての消費税を考慮する必要はありません。
※ご紹介した内容は、記事掲載時点の法制度や専門家の意見に基づいています。クラウドファンディング会計処理の詳細については、最新情報の確認や税務会計に精通した専門家にご相談されることをお勧めします。
【6】中小企業のクラウドファンディング活用
このように中小企業がクラウドファンディング活用することで、「資金調達の多様化」、「マーケティング、プロモーションの機会の創出」、「市場の検証とフィードバック」、「新たなコミュニティ(市場)の形成と応援者の獲得」などさまざまなメリットがあります。
中小企業がクラウドファンディングを利用する方法は多岐にわたりますので、自社のニーズや目標に合わせた戦略的なプランニングを行い、適切なクラウドファンディングプラットフォームを選択してチャレンジしてはいかがでしょうか?