輸入貿易の基本・輸入管理とリスクについて説明します!

商社
公開日:2022.11.16
更新日:2022.11.16
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輸入貿易をおこなう際には、輸入管理についての理解が必要です。なぜなら輸入が禁止されていたり、規制されている貨物があるためです。輸入管理については法令ごとに細かい規制が多々ありますが、まずは全体感を把握されるとよいでしょう。また、輸入貿易をおこなう際は様々なリスクが発生します。どのようなリスクがあるのか、主だったものについて説明します。

目次

輸入貿易管理とは

日本における貿易管理制度は、国際的な平和と協調に基づき、公正かつ自由におこなわれるように、様々な法令によって管理されています。法令とは法律(国会の議決により制定される)と命令(行政機関が制定する)の総称です。輸入貿易を管理する法令には以下の4つがあります。

  1. 外国為替及び外国貿易法
  2. 輸入貿易管理令
  3. 関税法
  4. 他法令

各々の法令の詳細について、以下に記載します。

1. 外国為替及び外国貿易法(以下、外為法)

貿易管理制度の基本となるのが、外為法です。

2. 輸入貿易管理令

外為法に基づいて、輸入管理を実務面から具体的にカバーするのが、輸入貿易管理令になります。日本に輸入しようとする貨物は、全て輸入貿易管理令の適用対象になります。輸入貿易管理令は、輸入に際して許認可等が必要な貨物を輸入公表で発表しています。輸入承認が必要となる貨物を以下のようになっています。

  1. 輸入割当品目(IQ(Import Quota)品目)
  2. 特定原産地・船積み地域の特定貨物
  3. すべての原産地・船積地域の特定貨物
  4. 事前確認・通関時確認品目

3. 関税法

輸入貿易管理令以外の法令でも輸入が規制されている貨物があります。関税法では以下に該当する貨物を輸入禁止対象としています。

  1. 麻薬および向精神薬、大麻、アヘン、けしがら、覚せい剤(覚せい剤取締法にいう覚せい剤原料を含む)ならびにあへん喫煙具
  2. 指定薬物
  3. けん銃、小銃、機関銃および砲並びにこれらの銃砲弾並びにけん銃部品
  4. 爆発物
  5. 火薬類
  6. 化学兵器の禁止および特定物質の規制等に関する法律2条3項に規定する特定物質
  7. 生物テロに使用されるおそれのある病原体
  8. 通貨または有価証券の偽造品、変造品および模造品並びに偽造クレジットカード
  9. 公安または風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物など
  10. 児童ポルノ
  11. 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権または育成者権を侵害する物品
  12. 不正競争防止法に規定する周知表示の混同を惹起する製品、著名表示を冒用する製品、形態模倣品、アクセスコントロール等回避機器、営業秘密侵害品

4. 他法令

関税法70条では、関税関係法令以外の特定の法令で、許可、承認、検査、条件が必要とされる貨物について、税関の輸入許可を得る前に、貨物を監督する所管官庁の輸入の許認可が必要と規定しています。つまり、該当する貨物については、税関の輸入許可と事前の所管官庁の許認可が必要となります。所管官庁の許認可がないと、日本に貨物が到着しても輸入することができません。

輸入に関わる主な他法令については様々ありますが、一部を記載します。( )内は所管官庁です。

  1. 食品衛生法(厚生労働省)
  2. 植物防疫法(農林水産省)
  3. 農薬取締法(農林水産省)

上記以外にも、多くの他法令があります。輸入する貨物がどの法令に該当するのか、担当の所管官庁を確認し、許認可に該当するか確認が必要です。所管官庁から許認可を得るためには時間がかかるものがあります。輸入を検討する段階で速やかに確認を進めましょう。

一方、国際的な平和や地球環境を守るため、さまざまな国際間の取り決めがあります。この取り決めに該当する貨物は輸入が規制されます。対象になる貨物については、輸入貿易管理令の輸入公表の中で掲げられています。

  1. ワシントン条約

    絶滅のおそれのある野生動植物の保護を目的に、国際間の取引を規制しています。

  2. モントリオール議定書

    オゾン層を破壊する物質の放出をなくすことを目標としています。オゾン層を破壊するフロンやハロン等の輸入が規制されています。

  3. バーゼル条約

    有害廃棄物が国境を越えて移動することや、移動後の廃棄処分によって健康や環境被害をなくすことを目的としています。

  4. HACCP(ハサップまたはハシップ)

    食品の安全を確保する方法として国際的に認められている衛生管理の方法です。義務ではなく任意規定ですが、アメリカ、EU向けの食肉製品、水産食品、ジュースなどはHACCPの証明がないと、当該国での輸入が認められません。

  5. 兵器に関する国際的な貿易管理

    戦争を未然に防ぐために取り決められた貿易管理で、以下があります。

    ①ワッセナー・アレンジメントWA
    通常兵器及び関連技術、軍事目的に転用可能な民生品、民生技術に関する輸出管理体制です。

    ②原子力供給国グループNSG
    原子力関連の資材・技術の輸出管理を目的として設立されたのがNSGです。参加する各国が自主的に輸出を規制することになっています。

    ③オーストラリア・グループAG
    化学兵器や生物兵器、ミサイルに利用される材料や技術を有する国が輸出を管理し、規制する取り組みです。

輸入に関わる法令

輸入に関わる法令は、貨物の輸入を規制するものだけではありません。輸入に関わる法令は大きく2つに分けることができます。関税関係の法令と、関税関係以外の法令です。

1. 関税関係の法令

関税関係の法令には「関税法」「関税定率法」「関税暫定措置法」の3つがあります。

  1. 「関税法」は、関税の確定,納付,徴収および還付ならびに貨物の輸出および輸入についての税関の手続の適正な処理をはかるために必要な事項を定めた法律です。関税法では関税に関わる事項だけでなく、先述の「輸入貿易管理」の項で記載した様に、輸入禁止の貨物も規定しています。
  2. 「関税定率法」とは、関税の税率、課税をおこなう場合の課税標準および課税の減免その他関税制について定めています。
  3. 「関税暫定措置法」は国民経済の健全な発展を目的として、関税の暫定税率、減免税制度、特恵関税制度、関税割当制度について、暫定的な特例を規定しています。

2. 関税関係以外の他法令

関税関係以外の他法令とは、輸出または輸入に関して税関の許可のほかに所管官庁の許認可などを定めたものをいいます。関税関係以外の他法令の主なものは以下の法令があります。

  1. 外為法

    外為法は貿易管理の基本となる法律です。日本と外国の間の資金やモノ・サービスの移動などの対外取引が正常に発展するよう、必要最小限の管理または調整する内容を定めた法律です。

    例えば、輸入割当の制度があります。これは特定品目の輸入数量を、経済産業大臣に申請した各社に分配し、その限度内での輸入を承認する制度です。原則1年に1回、輸入発表(申請手続などの発表)がおこなわれ、輸入承認を得た者(法人)だけが輸入できる仕組みです。一例として、海苔や昆布など多くの水産物は輸入が自由にできない輸入割当の品目に指定されています。

  2. 外為法以外の他法令

    外為法以外の他法令の例として以下の法令があります。これらの他法令は所管官庁ごとに該当する貨物の許認可等の規定があります。

    ①食品衛生法
    ②植物防疫法
    ③農薬取締法
    ④家畜伝染病予防法
    ⑤医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(旧薬事法)

輸入に関わるリスク

輸入貿易においては様々なリスクが発生します。主な3点について記します。

1. 貨物の遅延

遅延の原因は様々あります。例えば、コンテナ船は外部環境の影響を受け、必ずしも予定通りに到着するとは限りません。本船自体の事故、港湾ストライキや自然災害の影響などを受けます。

2021年3月には、強風にあおられ座礁した日本のコンテナ船が、スエズ運河を塞ぐ事故が発生しました。1週間に渡り運河の航行ができなくなり、EU圏とアジア圏を結ぶ国際物流に多大な影響を与えました。

コロナ渦ではコンテナ製造数の減少、港湾荷役の停滞、コンテナ船の沖待ちなどの複合的な要因により各国で大幅な遅延が発生しました。

貨物が遅延した場合、サプライチェーン上で様々なリスクが発生します。例えば、製品や原料の供給リスクや、シーズンに間に合わず販売の機会損失が発生したり、コンテナ内で貨物の品質劣化や変質が発生する可能性があります。

コンテナ船で輸送できない場合、現地からの輸出を航空貨物による輸送へ切り替えて対応することがあります。しかし、IATA(International Air Transport Association:国際航空運送協会)の規則により輸送できない貨物があります。危険品や磁気を帯びた貨物等が該当します。また、航空貨物はコンテナ輸送と比較しても1回あたりに輸送できる物量が低下し、輸送コストも上昇します。

2. 輸入貨物のダメージ(損傷や損害)

通常、貨物は輸出国から洋上を時間をかけて移動してきます。輸出国でコンテナに問題なくバンニング(コンテナへの貨物の積み込み)ができても、移動中の振動や貨物を保護する養生の不具合で荷崩れやダメージを被ることがあります。

輸入貨物が日本に到着し、引き渡しを受けたあと輸入者が直ちにすべきことは、貨物にダメージがないかを確認することです。ダメージがあった場合は、必ずダメージの状況を撮影します。画像はその後のクレーム手続きのためのエビデンスとなります。また、輸出者に対してダメージの状況を伝え、梱包や養生の改善を求めるための情報となります。

貨物に損傷や損害があった場合は直ちにクレーム手続きおこないます。損害賠償請求をおこなうためには、クレーム手続きをしていることが前提となります。輸入者は、貨物がダメージを受けた状態で荷降ろしされた場合、必ずリマークのある貨物受渡書類(損傷状態を明記したもの)を受け取ります。これは船会社や輸送会社の責任を明確化するための重要な証拠になります。もしリマークがない書類を受け取った場合、船会社や輸送会社の瑕疵(かし)を証明できないため、損害賠償の請求が困難になります。

ダメージがあった場合は、船会社や輸送会社、保険会社に事故通知をおこないます。保険会社は事故通知の後、サーベイ(損害鑑定)をおこないます。損害鑑定が完了後、輸入者はサーベイレポートに基づき、損害賠償の保険金請求をおこないます。

3. 為替変動リスク

日本へ貨物を輸入する場合、通貨が異なる国同士の取引になります。外貨と円貨での売買になります。しかし、外貨と円貨の交換をおこなう外国為替相場は常に市場で変動しています。そのため、契約時の金額と決済時の金額が変動し、為替差損で採算割れを起こす可能性があります。これが為替変動リスクです。

為替変動リスクを回避する手段として、為替先物予約があります。輸出入者はリスク回避のため、銀行と将来の先物相場を予約します。これを先物予約といいます。

例えば1ドル100円で為替予約をしておけば、円高で80円になったとしても予約した100円で買い取ってもらうことができます。為替の先物予約は円貨に換算した受け取り金額や支払い金額を確定し、為替差損を回避することができます。

まとめ

輸入貿易においては法令遵守が必須となります。輸入に際して所管官庁から必要な許認可を得ていない場合、貨物を輸入できないばかりでなく、大きなリスクに発展する可能性があります。輸入に際しては十分な法令の確認のみならず、関係各所への相談、所轄官庁へ必要な許認可の申請をおこなってください。
GRANDIT miraimilでは輸入にかかわるプロセスの効率化をご提案できます。輸入業務の効率化をお考えであればGRANDITまでご相談ください。

【参考文献】

  • 片山立志『よくわかる貿易実務入門』(日本能率協会マネジメントセンター、2022年)
  • 蘇我しのぶ『貿易実務の基礎がよくわかる本』(C&R研究所、2020年)
  • 片山立志『絵でみる貿易のしくみ』(日本能率協会マネジメントセンター、2020年)
  • 高橋靖治『貿易のしくみと実務』(同文舘出版、2015年)

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