DXコラム#05 DXとデジタル化 2/2 デジタル化との違い

公開:2021.11.2
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前回のDXコラム#04では、DXとは何かについて、その歴史的な経緯を踏まえて解説しました。今回のコラムでは、そんなDXとデジタル化の違いについて、解説します。

デジタル化との違い

「DX」と「デジタル化」という言葉が、明確に区別されることなく、曖昧に扱われていることがあります。前回は、DXについて、歴史的経緯を踏まえて、その本質を解説しましたが、今回は、デジタルとは何かを解説し、DXとの違い、及びその関係を整理します。

デジタルとフィジカル

「デジタル(digital)」とは、本来「離散量(とびとびの値しかない量)」を意味する言葉で、連続量(区切りなく続く値をもつ量)を表すアナログと対をなす概念です。ラテン語の「指 (digitus)」を表す言葉が語源で、「指でかぞえる」といった意味から派生して、離散的な数、あるいは数字という意味で使われています。

一方、現実世界(フィジカル世界/Physical Worldとも言う)の「ものごと」や「できごと」は、全て「アナログ」です。例えば、時間や温度、明るさや音の大きさなどの物理現象、モノを運ぶ、誰かと会話するなどの人間の行為もまたアナログです。しかし、アナログのままではコンピュータで扱うことはできません。そこで、コンピュータで扱えるデジタル、すなわち0と1の数字の組み合わせに変換する必要があります。

現実世界のアナログな「ものごと」や「できごと」は、デジタルに変換することで、コンピュータで処理できるカタチに変わります。つまり、センサー、あるいはWebやモバイル・デバイスなどを介して、現実世界の「ものごと」や「できごと」が、デジタル・データに変換され、コンピュータに受け渡されるのです。
こうして、コンピュータの中に、「アナログな現実世界のデジタル・コピー」が作られます。これを「デジタルな双子の兄弟」、すなわち「デジタル・ツイン(Digital Twin)」と呼んでいます。
つまり、「デジタル」とは、現実世界の「ものごと」や「できごと」を「コンピュータで扱えるカタチ」に置き換えた姿と言い換えることができます。

デジタル化

アナログな現実世界の「ものごと」や「できごと」を「コンピュータで扱えるカタチ」すなわち、デジタルで表現し直すことが、「デジタル化」です。

「人間のやっていたことをコンピュータでできるようにする」ため

このように説明するとわかりやすいかも知れません。そんなデジタル化により、次のようなことができるようになります。

  • これまで1週間かかっていた申し込み手続きを5分で終わらせる
  • 顧客の行動(いま、どこで、何をしているのか)が分かる
  • 他のデジタル・サービスと一瞬にして連携できる
  • 膨大なデータの中にビジネスに役立つ規則や関係を見つけることができる
  • 業務の進捗、人の動き、ビジネスの状態が、リアルタイムに「見える化」される

など

では、なぜ、デジタル化するのでしょうか。それは、アナログな現実世界における次のような価値を手に入れるためです。

  • 顧客満足が向上する
  • 業績が改善する
  • 社員が幸せになる

など

「これまで1週間かかっていた申し込み手続きを5分で終わらせる」ことができれば、顧客はその便利さに感動するでしょう。そのうわさは瞬く間に拡がり、さらにお客様が増え、業績も向上します。

「顧客の行動(いま、どこで、何をしているのか)」が分かれば、その状況にふさわしい、サービスを提供できます。例えば、スタジアムでサッカーを観戦していて、お気に入りのチームが勝ったなら、そのチームのロゴの入った「いまだけ限定」のプレミアム・グッズをスマホで紹介すれば、喜んで買ってくれるかも知れません。そうすれば、売上が向上します。

現実世界での価値を定めないままに、デジタル化だけに取り組んでも、それはただの自己満足であり、ビジネスに貢献することはありません。

2つのデジタル化:デジタイゼーションとデジタライゼション

「デジタル化」という日本語に対応する2つの英単語があります。

デジタイゼーション(digitization)

デジタル技術を利用してビジネス・プロセスを変換し、効率化やコストの削減、あるいは付加価値を向上させる場合に使われます。例えば、アナログ放送をデジタル放送に変換すれば、少ない周波数帯域で、たくさんの放送が送出できます。紙の書籍を電子書籍に変換すれば、いつでも好きなときに書籍を購入でき、かさばらず沢山の書籍を鞄に入れておくことができます。手作業で行っていたWeb画面からExcelへのコピペ作業をRPAに置き換えれば、作業工数の大幅な削減と人手不足の解消に役立ちます。
このように効率化や合理化のためにデジタル技術を使う場合に使われる言葉です。

デジタライゼーション(digitalization)

デジタル技術を利用してビジネス・モデルを変革し、新たな利益や価値を生みだす機会を生みだす場合に使われます。例えば、自動車をインターネットにつなぎ稼働状況を公開すれば、必要な時に空いている自動車をスマートフォンから選び利用できるカーシェアリングになります。それが自動運転のクルマであれば、クルマが自ら迎えに来てくれるので、自動車を所有する必要がなくなります。また、好きな曲を聴くためには、CDを購入する、ネットからダウンロードして購入する必要があったが、ストリーミングであれば、いつでも好きなときに、そしてどんな曲でも聞くことができ、月額定額(サブスクリプション)制で聴き放題にすれば、音楽や動画の楽しみ方が、大きく変わってしまいます。
このように、ビジネス・モデルを変革し、これまでに無い競争原理を実現して、新しい価値を生みだすためにデジタル技術を使う場合に使われる言葉です。

どちらも、ビジネスには必要な「デジタル化」です。

しかし、これらを区別することなく、あるいは、両者を曖昧なままに、その取り組みを進めるべきではありません。前者は、既存の改善であり、企業活動の効率を高め、持続的な成長を支えるためのデジタル化です。一方後者は、既存の破壊であり、新たな顧客価値や破壊的競争力を創出するためのデジタル化です。

前者であれば、既存あるいは現状を基準に、「コストを30パーセント削減する」や「10日間かかっている納期を5日間へ短縮する」といったKPIを設定し、そのための手段を考えることになるでしょう。一方後者は、「やってみなければ分からない」取り組みです。つまり、試行錯誤を繰り返しながら、正解を探す取り組みです。

前者は、既存を前提に目標を設定して、取り組むことができますが、後者は、既存を逸脱し、新しいやり方を発見しなくてはなりません。目標の立て方や関わる人たちの文化はまるで違います。両者の違いを区別することなく、あるいは曖昧なままに、取り組んでもうまくいきません。それぞれに応じた適切な戦略や施策、組織や体制で取り組む必要があります。

デジタル化とDXの違い

前回のコラムで、DXを次のように定義しました。

「デジタル・テクノロジーの進展により産業構造や競争原理が変化し、これに対処できなければ、事業継続や企業存続が難しくなる。これに対処するには、自分たちの競争環境 、ビジネス・モデル、組織や体制を再定義し、企業の文化や体質を変革すること」

一方、デジタル化は、次のように定義できるでしょう。

「アナログな現実世界のものごとやできごとをコンピュータで扱えるカタチに置き換え、人間のやっていたことをコンピュータでできるようにすること」

また、デジタル化には、「デジタイゼーション:効率化のためのデジタル技術の活用」と「デジタライゼーション:変革を伴うデジタル技術の活用」との2つがあり、前者は「既存の改善」であり、後者は、「既存の破壊」であると説明しました。

「DX」は、変革であり、「デジタル化」は、そのための手段です。

DXが示す「あるべき姿」への変革を実現するには、デジタル化は有効な手段ですが、それだけでは、「あるべき姿」にはなりません。事業の目的や経営のあり方を再定義し、「いまの社会」に適応するための取り組みも必要になります。

「いまの社会」とは、「変化が早く、予測困難な社会」です。このような「いまの社会」を支えているのは、インターネットやクラウド、スマートフォンやIoTなどのデジタルです。そんなデジタルが前提の社会に対処するには、自らもデジタルを駆使して、圧倒的なビジネス・スピードを獲得し変化に俊敏に対応できる企業、すなわち「アジャイルな企業」に変わる必要があるのです。

当然、そこで働く人たちや組織の仕組みも、変化に俊敏に対応できなくてはなりません。すなわち、自律したチームへの大幅な権限委譲やそれを支えるオープンな情報共有、従業員ひとり一人が最高のパフォーマンスを発揮するためのワークスタイルの多様化などです。つまり、アジャイルな企業の文化や風土への変革が必要です。

DXとは、既存のビジネス・プロセスやビジネス・モデルを「デジタル化」することに留まらず、企業の文化や風土への変革を目指す取り組みと言えるでしょう。

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