DXコラム#04 DXとデジタル化 1/2 DXの歴史的経緯

DX
公開日:2021.10.28
更新日:2021.10.28
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AIを使った新規事業を立ち上げれば、それはDXになるのでしょうか。リモートワークを実践し、そのためにワークフローを電子化して捺印や紙の書類を廃止すれば、それはDXといえるのでしょうか。業務システムをオンプレミスからクラウドへ移行すれば、それはDXなのでしょうか。

デジタル技術を使い業務を効率化したり、新しいビジネス・モデルを生みだしたりすることは、企業の存続と成長にとって、必要なことです。しかし、このような取り組みは、「DX」という言葉が使われる以前から行われてきました。それらを私たちは、「デジタル化」あるいは「IT化」と呼んでいました。
もちろん言葉の解釈など恣意的なものです。「デジタル化」や「IT化」を「DX」と読み替えることが、ダメだとか、間違っていると言うつもりはありません。
しかし、DXについての歴史的な経緯をたどってみると、ただの置き換えのバスワードではないことが分かります。

そんなDXについて、「DXの歴史的経緯」と「デジタル化との違い」の2回に分けて、解説します。

DXの歴史的経緯

まずは、DXとは何かについて、歴史的系譜を抑えながら整理します。また、DXという言葉をはじめて使った2004年のストルターマンの解釈と、いま私たちが使っている解釈が、異なっていることについても解説します。

図:DXの定義

ストルターマンが提唱したDXの定義

「デジタル技術(IT)の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」

DXとは、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授らが、はじめて提唱した概念です。

この定義が書かれた論文では、DXを「デジタルは大衆の生活を変える」といった概念的な説明に留まっています。また、ビジネスとITについても言及し、企業がITを使って、「事業の業績や対象範囲を根底から変化させる」、次に「技術と現実が徐々に融合して結びついていく変化が起こる」、そして「人々の生活をよりよい方向に変化させる」という段階があるとも述べています。

デジタル・ビジネス・トランスフォーメーションの登場

「デジタル・テクノロジーの進展により産業構造や競争原理が変化し、これに対処できなければ、事業継続や企業存続が難しくなる」

2010年以降、ガートナーやIDC、IMD教授であるマイケル・ウエィドらの解釈です。ストルターマンらの解釈とは違い、より経営や事業に踏み込んで解釈したものと言えるでしょう。

彼らの解釈は、デジタル・テクノロジーに主体的かつ積極的に取り組むことの必要性を訴えるもので、これに対処できない事業の継続は難しいとの警鈴を含んでいます。つまり、デジタル技術の進展を前提に、競争環境 、ビジネス・モデル、組織や体制の再定義を行い、企業の文化や体質を変革する必要があると促しているわけです。

ガートナーは、これをストルターマンらの定義とあえて区別するために、「デジタル・ビジネス・トランスフォーメーション」と呼ぶことを提唱しています。

この「デジタル・ビジネス・トランスフォーメーション」については、マイケル・ウェイドらが、その著書『DX実行戦略/デジタルで稼ぐ組織を作る(日経新聞出版社)/2019年8月』で、次のような解釈を述べています。

「デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを用いて組織を変化させ、業績を改善すること」

2018年に経済産業省が発表した「DXガイド」もこの「デジタル・ビジネス・トランスフォーメーション」の解釈を踏襲し、次の定義を掲載しています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

この定義は、ストルターマンらの解釈ではなく、ガートナーやマイケル・ウエイドらの提唱する「デジタル・ビジネス・トランスフォーメーション」の解釈に基づいています。そして、これを「DX/デジタル・トランスフォーメーション」と呼んでいるわけで、この点は注意しなくてはならないでしょう。

つまり、私たちが、普段ビジネスの現場で使っている「DX」とは、「デジタル・ビジネス・トランスフォーメーション」のことであり、これを前提に、私たちは、DXを解釈する必要があるということになります。

私たちが「いま使っている」DXの定義

改めて、私たちがいま使っているDXについての解釈を整理すると、次のようになるでしょう。

「デジタル・テクノロジーの進展により産業構造や競争原理が変化し、これに対処できなければ、事業継続や企業存続が難しくなる。そのためには、自分たちの競争環境 、ビジネス・モデル、組織や体制を再定義し、企業の文化や体質を変革すること」

ところで、なぜ「Digital Transformation」 を”DT”ではなく”DX”と表記するのでしょうか。実は、ここにDXの本質が示されています。本来、”Trans-“には「上下を入れ替える」や「ものごとひっくり返す」、「交差させる」という意味があります。既存を「入れ替える」ことや「ひっくり返す」こと、すなわち「変革すること」のイメージを”X”で表現しているわけです。

「デジタルでビジネスを変革する」。「DX」という二文字は、DXの本質を実にうまく表現しているのです。

次回のコラムでは、そんなDXとデジタル化の違いについて、解説します。

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